Ep9 ”麻希”VS”PK厨”
「うわッ!? PK厨だ!!」
着弾するまで残り3秒もないだろう。しかも追尾されている以上、角を曲がって回避することもできない。
ならば、12時間に及ぶ初日のプレイで得た☆2“ギア”に対処してもらうほかない。警告音が強まる中、冷や汗を垂らしながら麻希はその“ギア”が発動するのを祈る。
結果。
「……。交わせた?」
常時発動型“フレアデコイ”が空を舞い、それらにロケット弾がおびき寄せられた。砲弾は空中高くで大爆発を起こし、その爆風と轟音が皮膚と耳をかする。
その音とともに、あられもなく気絶していた妹の麻友が目を覚ます。
「ん……。いまの音と風なに?」
「ホーミング式のランチャーをぶっ放されたんだよ」
「は?」
「でも巻き返してみせる。プレイヤーキルされちゃうと再ログインするのに3時間かかるからね。しかも……」
車を曲がり角に止め、麻希は“デバイス”をスワイプして大量の武器をリスポーンさせた。両手にライフルから自走ロケット砲、背中にはジェットパックみたいな物体を装着している。
「このゲームで他のプレイヤーに殺られると持ってるアイテムを全部落としちゃうしね。まだまだ美少女でいたいし、なにより──」
160センチくらいの小柄なアルビノ少女麻希は、どこか楽しそうに宣言した。
「ヒトからもらったものを奪われるなんて最悪だろ?」
追尾式のランチャーだろうと関係なく、そろそろ2発目を放ってくるだろう。そしてミサイルの飛んでくる角度的に、敵がいる場所はビルの屋上だと思われるので、麻希はジェットパックらしきものを起動した。
「お兄ちゃん……なにも闘わなくたって良いじゃん。あたしを独りぼっちにしないでよ。いっしょにのんびり東京観光でもしようよ」
すでに地面から若干浮いている麻希に麻友は懇願する。が、麻希はニコリと笑いこう告げるだけだった。
「もうひとつの現実なんだから、刺激に溢れてるほうが良いじゃん?」
瞬間、麻希は天空高く舞い上がった。高層ビル郡も見下ろせるほどの高さまで昇り、スナイパーライフルで敵性を狙撃しようとする。
「相手からしても見えてないだろうけど、そりゃつまりこっちからも見えないってことだもんなぁ……」
しかし、16倍ズームのスコープでも敵を捉えられない。いや、照準を合わせられたところで偏差撃ちは困難を極める。
「あーあ。わざわざ高いところまで来たのになぁ」
と、ぼやき麻希はやや地上へ近づこうとした。
「──ッ!? この距離を!?」
その刹那であった。構えていたライフルが粉々になったのは。
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