第4話:え?ほかの人も探すんですか?
とある日の土曜日。
週に一度しか休みがないというオークの奴隷よりひどい生活の中で勝ち取ったつかの間のお休み
それなのにどうしてこんなことに―――――
「三首さんも魔物なんですねぇ」
「そうなんす。あっちの世界じゃあ首が三つあって3Mもあったんすよ」
「嘘つかないでください。ケルベロスの大きさはこちらの世界の大型犬くらいにしかならないじゃないですか」
匂いをたどったんす!と急に現れた三首さんと、魔物だと知ってウキウキの顔で招き入れた古里さん。
休みの日なんです。休ませてください...
「つまりゴールデンレトリバーってことですか?」
「そうっす!!」
そうじゃないです。と言いそうになったけど恐らくきりがない
黙ってこの二人を見ておこう
「それでどうしてこんなところに?」
こんなところ呼ばわりをしないでほしいです古里さん。大体あなたの家具です
「あ。そーっすそーっす。今日は提案があってきたんすよ」
なんだか嫌な予感がします
とてつもなく面倒くさそうな―――
「きっと転移してるのはうちらだけじゃないと思うんす!だからうちらで探すんすよ!!」
「わぁ。それってとっても素敵だね」
信じられない悪口が口から出そうになったのはおそらくきっと会社に毒されているからだと思いたい。
それにしても予感は的中してしまった
「無理です。大体、仕事で忙しいっていうのにそんな時間作れませんよ」
「そこでっす!そこで工作の能力を使うんすよ!」
「探知機を作れとでも?無理ですよ。そんな機械も材料もうちにはありません」
「だったらダウジングとかどう...かな?」
「「ダウジング??」」
「うちのおばあちゃんがよく村で逃げ出した家畜を探すときに使ってたんだけど五円玉に糸を通して地図にかざすの」
「探し物がある場所は右回り、無い場所は左回り、そういう風になるんだ」
「すげえ!!お婆ちゃんの痴女袋っすね!」
「知恵です。それにそんなことできるおばあさんは人間ではありえません。おそらく運です」
「でも遅刻先生ぬ~べ~でも見たさ?」
「あの。それって漫画の世界の話じゃないですか、ここは現実ですよ?」
これはさすがに自分で言っていて矛盾してるなと思ってしまいました
けどそんな―――
――――いや、できないことはないけど。面倒なので気づかないでください
「ん?でもそれって工作を使ってエンチャントすれば探知の魔具になるんじゃないっすか?」
気づいた...そんなことにはすぐ気づくんですね…やめてください
手間を増やさないで…
「んだんだ!だったらさっそく硬貨選びしないと!」
「五円玉でやるんじゃないですか?だったら今私もってますよ」
「いやダメっす!もっと効果があるように500円玉を使うべきっす!」
「いや。500円玉に穴はないです」
「あけれるっすよ!犬歯で!」
「犬歯で!?」
「こう見えて三棟分の頭のかむ力が一つに集約されてるんすよ!!こんなの楽勝っす!」
――――結果三首さんの犬歯が欠けたことは言うまでもありません
――――――――――
「で?ダウジング用のものはできましたけど、これをどう使うんですか?」
「これはこうやって地図の上で―――」
「―――地図がありません」
「本末転倒ですね、三首さん古里さんまた今度にしましょう」
「ククールマップを使えばいいんじゃないっすか?」
全部の犬歯が折れればいいのに...なんて言いそうになってしまいました
社会に塗れるのは怖いですね
「んだべな!それじゃ私のスマホを使って、って二人はスマホ無いんだべか?」
「そういえば...」
「持ってないっすね」
この生活の中で何か足りないと思っていましたが、そうだ、この便利な機械を持ってないんです
でもこれはどうやって手に入れるんでしょうか、成人の議を終わらせたりするともらえるというわけでもなさそうですし...
「それじゃあ契約しないとだね」
「契約?」
「嫌っすよ!!死後地獄で魂を焼かれるなんて!!」
「あはは、そうじゃないよ。携帯屋さんにいって契約するの」
さすがに悪魔との契約ではないとは思ってましたが、なるほどそういうシステムなんですね
だったらパパッと契約しないと
「それじゃあ契約っす!そうと決まったらお店に行かないといけないっすね」
「あ。私も新しいカバーほしいからお店に行かないと、けなみちゃん一緒に行こう」
「そうと決まれば善は急げっす!!」
殺気の転移者探しの話はいったいどうなったんですかとは言わないでおきます
面倒極まりないことから解放されそうですし
それにスマホは持っていて便利みたいですしね
「それでは準備をしてきますので、お金のほうはおいくらくらい持っていけば?」
「安いのだったら5万円で足りるよ」
「ぐぬぬ...生活には厳しいっすが、これもスマホのためっす」
「近くのお店調べるね」
そんな時だった
『ガチンッ』
古里さんがスマホでお店を調べて出した瞬間に五円玉がスマホの画面に勢いよく張り付いた
...嘘ですよね????
「ひゃっ!!」
「反応ありっす!!!スマホの契約のついでにお仲間探しに行くっすよ!!!」
「おー!!」
あぁ...私の休みが...私の安息日が...
意気揚々と両手を上げる二人を見ながら途方もない気持ちになりました
...二人で行ってくれないかなぁ
「ほら!早く準備するっすよ!!」
「んだ!早くいかないとどっか行っちゃうかもしれないよ!」
スマホの契約だけでいいのに...
けどまあ、ついでといえばついでなのかもしれない。
もうなるようになれでしょう。これで元の世界に戻れる手立てが見つかればいいのですが――――
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