第2話:え?これがこの世界ですか?

唐突に始まった私のルームシェア生活

三日目になるけれど、いろんなことを古里さんから教えてもらった


ここは日本という国の東京という都市であること

元の世界でいうと王都とということ

あとはこの紙の札はお金というものであり万人が死ぬほど欲しいもの

行ってしまえばこれさえあれば何でもできる聖杯代わりのものだということ


そのために人は労働をするらしいこと


「でも私の仕事って何ですかね」


「OLって書いてありましたし...OLじゃないんですかね」


「何をする仕事ですか?」


「書類を作ったりお茶を淹れたり脚立を運んだり」


「書類って木から?」


「いんや、コピー機を使います」


この世界便利な魔法はないけれど、便利な機械はたくさんあるらしい

コピー機もその仲間で、書面を複製してくれると認識をしています


「でもお仕事に行っていませんよ私」


「何か財布に名詞とか入ってないんですか?」


「これでしょうか?」


初日に財布をくまなく探したときに免許書といわれるものはあったけど

他にも紙が入っていた気がする


「それです、黒塗商事ってかいてありますし、ここの社員さんなんですよ」


「でも三日も会社に行ってないとなると...連絡もしてませんし怒られますよぉ」


「はぁ…怒られるも何もなんですが…」


この世界にやっと慣れてきたというのに次は労働?

しかも怒られるって、あまりにも理不尽が過ぎます


「で、貴方のお仕事は?」


「餃子の姫将のアルバイトです」


「アルバイト?」


「お給料は社員さんより低いけど、その分融通の利くお仕事です」


「なるほど?」


どうやら働き方にもいろいろあるらしい

この前はテレビとやらで派遣やパートなどの言葉も聞いた

...複雑が過ぎないですか?


「でも古里さんはアイドルになるのでは?」


「それは夢です。あんなキラキラの世界にいってキラキラになるのが小さいころからの夢で」


「ほら私パッとしないし、田舎生まれだし、外反母趾だし」


「三つめは特に関係ない気もしますけど…それになるためにここに?」


「はい!ここに」


無理だと思った。

バカで騙されやすくてそれがあんな画面の向こうのキラキラした存在に...

けどそれは言わないことにしておきます


「それで両親の反対を押し切って、お寺を継ぐのもやめて一念発起してここに来ました」


「クレリックは安定しているのにわざわざバードになろうなんて変わってますね」


「よく地元でもおばあに言われてました」


まぶしい笑顔を向ける古里さんを見ながら私は労働のことを考えていました。

どうもこの世界ではそれをしないとよほどではない限り生きていけないらしいので

...明日にでもこの名刺の場所に行ってみましょう


「古里さんはいつからアルバイト、なんですか?」


「明日からです!初出勤です。餃子たくさん持って帰ってきますね」


「その食べ物がよくわかりませんがおいしいならぜひ」


「おいしいんですよぉ。じゅわッとしててホカホカで」


「その例えではよくわかりませんが、おいしいものならぜひ」


「凜ちゃんは?」


「私も明日にでも行ってみようと思います、お金とやらを稼がないとだめらしいので」


「そうですよ。お金は大事です、この世界では一番大事とされてます」


「でもあなたは壺を買っていたのに?」


玄関の靴箱の上に置いてある小さな極彩色の壺を指さすとバツの悪そうな顔をした


「あれは勉強です!それに信頼と愛私が一番大事だと思ってるのはおかねよりこれです」


「けど騙されて大損してましたよね」


「凜ちゃんいじめないでくださいよぉ」


「いじめていません。事実です」


「けんど明日からウキウキですね、変なことしちゃだめです、あと人前で魔法も」


「もうそれ20回は聞きました、古里さんよりかはうまくやりますよ」


「私はそんなドジ踏みません!」


「昨日謎のイルカの画を売りつけられて小脇に挟んで帰ってきた人に言われても信用が無いですよ」


今は玄関のわきに立てかけてあるこの絵はラッセルの高い絵らしい。

妙にぎらついていて私は好きではないです


「とにかく明日は朝早くに会社に行ってくださいね」


「お昼からではダメなんですか」


「社員さんは基本朝が早いんです」


「なるほど...」


なんだかこの世界は制約が多いですね

でもまあお金のためらしいので何とかいかないと

場所もわかりませんし少し早めに出るのが良いでしょう


「ところで今日の夕飯は?」


「ミャックでいいです、古里さんの毒はもうこりごりなので」


「砂糖と重曹間違えただけで大袈裟ですよ!」


「口の中が泡だらけになって独特の苦みに苦しめられるのが大げさなら古里さんの今までの生活を疑います」


「今まではおっかあが作ってくれてたから…」


「だったら安心して食べれるものを食べましょう、死にたくはないので」


古里さんに何かをさせると大体とんでもないことをしでかしてくれる

私がこの世界にきて学んだこと、この女だけは信用してはいけないということだ。


「なんですか?じっとこっち見て」


「いえ。なんでもありません」


しかも悪意がないのが質が悪い

元の世界でいうなら立派な悪魔になれてたはずだろう

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