現代転生~え?元ゴブリンがOLですか?~
小佐マーヤ
第1話:え?OLですか??
ちゅんちゅんと朝鳴き鳥が鳴いて
オークたちが日課の伐採をしている煩い音でいつものように目が覚めた――
――はずだった
「...ん?」
目が覚めたのはいつもの藁作りの巣じゃなかった
周りを囲むのは色あせた壁、床はよくわからない木で編みこまれた板
おまけになんだか青臭い
「...え?」
私の美しいエメラルドの首飾りみたいだった緑色の肌は忌々しい人間と同じ肌の色に
しかも体が重たい
無駄に手足が伸びている、いつも通りなのは平らな胸だけ
「人間になってませんか私!?」
そうだ、同胞たちが周りにいるんだ
これが質の悪い呪いか何かならきっと解呪してもらえるはず
誰か!!!誰かこの呪いを解いて!!!
「...」
この人間たちに攻め込まれた後みたいなぼろぼろの部屋には私しかいないみたいで
途方に暮れてしまいそうです。しかも青臭いし
「どうしましょう...ここは...どこなんでしょう...」
そんなとき私の横に置いてある緑色の長方形の皮で作られた小さなバッグみたいなものに気が付いた
これは何なんだろう?何かこの状況が理解できるようなものがあるのかな
「...なんですかこれは。お金?と肖像画の描かれた変わった札?」
「あとは...小部凛???誰ですかこれは」
その中に入っているものは到底役に立たなさそうなものばかりで
いや、お金は使える。けどこの札は?もしかしたらこれは遊び道具か何か?
私も昔は小石を同胞と並べて遊んだけどもう私はそんな年じゃないですよ?
「―――って、なんで私この文字が読めてるんですか?」
どこかあか抜けないなんか村でテポトでも作ってそうな女の顔の書かれた札
これに似たものでギルドカードというものを人間が持っていたけど、これは違う
というよりも時からして違うのにどうして私はこれを読めてるんでしょうか
『ガチャッ』
そんな時どこかから音がした
まずい!今はこん棒も何もない...ありあわせのもので武器を作らなきゃ
「工作ークラフトー」
とりあえず神の札の先端をとがるように丸めて魔力を込めた
よかった...魔力は使えるみたいで
鉄位の強度はある、相手が何かは分からないけど護身具くらいにはなるはず
「小部さんですか?今日からよろしくお願いしますね」
武器を構えている私の前に現れたのは三つ編みに眼鏡をかけたこれまた田舎臭い女でした
しかもやたらなまっています
「誰...ですか!?」
「やんだぁ。私です、今日からルームシェアする古里こもりです」
「!?!?!?」
「ズィモティーの」
「ズィモティー?なんですかその呪文!」
「あはは。おんもしろいです。入居日に合わせて二人で暮らしたいってズィモティーで」
「入居!?」
「んだ。今日から入居で小部さんはOLで。私はアルバイトしながらアイドルの夢を追っかけるって」
「OL!?アイドル!?なんですかそれは」
「???」
古里と名乗った女は私に笑顔を向けながら床に座り込んでしまった
地面系の詠唱魔法で不意をつくつもりですか?そうはいきませんよ
「んでも、なーんもないですね、畳と壁とあと小部さんの財布だけ」
「あ。けど私の荷物は明日には届きます。家具は任せてください」
「家具!?」
「テーブルとイス。あとは冷蔵庫に電子レンジ」
「冷蔵庫と電子レンジ?」
「あと今日街で優しいお兄さんに売ってもらった絶対にアイドルになれる壺」
「それ騙されてませんか?聖杯は世界に二つだけ、売りに出されるなんてことは...」
「んだば、まーた騙されちゃったのかなぁ…」
目の前の古里とか言った女の表情が一気に曇る
なんだか私が悪いみたいじゃないですか
「いや!けどあり得るかもしれません!ほら最近勇者が魔王討伐のために各地を荒らしまわってるし」
「勇者?魔王?」
「もしかしたら魔王様が倒されて、世界の均衡が崩れて聖杯が持ち出されてしまったのかもしれないですし」
そんなはずはないけど、とりあえず慰めてあげることにしました
「小部さん!もしかして―――」
まずい。魔物ってばれた!?襲われる!?それとも捕えられて王国に!?
それとも今日の食事に?!
「―――異世界転生ってやつですか?」
「は?」
「わぁ。漫画でしか見たことないのに!すんごいなぁ!握手してください」
「え?あ。はい」
「どんな世界から来たんですか?剣と魔法の世界ですか?それともマルチバースってやつですか?」
「は?は?」
訳の分かってない私に古里は言葉をつづけた
異世界転生とはどうやらふとした拍子に別の世界に転移してしまうことらしい
そして何か条件を満たさないかまたふとした拍子じゃないと帰れない
そしてこの女はたぶんバカ
だって別世界に転移なんてもしこの話がその通りだったとしてもこっちの世界でもおとぎ話だ
それをやすやすと信じるなんて...逆の立場だったら信じない
「そうなりますかね」
「やっぱりあの壺効果あったんですよ!アイドルにはなれなかったけどもっと貴重な経験ができた!」
「いや、違いますそれは騙されてます」
「魔法とか使えるんですか!?」
「まあ、一応...といってもゴブリン族なので工作しかできませんけど。」
「くらふと??」
「材料にエンチャントして武具としての効力を上げる魔法です」
「ゴブリン族にも様々な魔法はありますが私に芽生えたのはこれでした」
「錬金術師ってことですか?」
「違います、別のものを別のものに変換するのではなく、そのものをそのものとして強くするので」
「東京ってすんごいなぁ…ゴブリンがいるなんて...」
「けどこの世界に来たのは今日です、どうしてあなたが事前に...」
「あ。それはさっき言ったズィモティーです」
そういって古里は小さい長方形の板を私に光らせながら見せる
魔具か?
『はーい!私小部凛!22歳のOLちゃんどぇーす!もうすぐ一人暮らしなんだけど…一人ってさ・み・し・い。しかも家具も何もないんだー。もし家具もちで一緒に暮らしてくれる人がいたらぁなんでもし・て・あ・げ・る』
「なんですかこれ?」
「凜ちゃんが書き込んだんじゃないんですか?」
「違いますよ!なんですかこのトチ狂った娼婦みたいな書き方」
「後凜ちゃんって呼ばないでください!、私にはゴブリン族の列記とした名前が」
「でも可愛いじゃないですか、凜ちゃん。友達みたいですよ。えへへ」
「えへへって...でも、これが書き込まれてるってことは、これを書き込んだ人物が私をここに連れてきたということですね」
「けど書き込んだ人の特定なんてできませんよ、今はネット社会ですから」
「ネット?」
「インターネットです。あとは私も詳しいことは分かりません。4Gで5Gです」
「わかりました。そこは自分で調べます」
「ところでなんでもお願い聞いてくれるんですか?」
「バカじゃないですか?書き込んだのは私ではありません!」
「けどいま凜ちゃんはここにいるし...私も来ちゃったし...」
「体も売りませんし暗殺もしませんし戦争にも動乱にも加担しません!」
「え?いやぁ...最初はお友達になってくださいっておねがいしようかとおもったんですけんど...もう凜ちゃんはお友達なので」
「違いますよ、あとなんですかそのちゃちなお願い」
「だって一人で東京は寂しいじゃないですか…馬っこも牛っこもいないんですよ」
「だから。この携帯に工作してください!見てみたいんです魔法」
「それくらいならいいですけど、貴方ってバカですね」
「えへへ。よく言われます」
笑う古里から携帯とやらを取って、工作をする
魔力は少し多めに使ってあげた、気まぐれで
「はい」
「なんも変わってないですよ?」
「そりゃその物をその物として強化しただけですから、それにそれは武器じゃなさそうですし」
「...あ!!!!!」
携帯の画面を不服そうに眺めていた古里が突然大きな声を上げた
そんな驚くべきエンチャントが?
「すごい!ずっと5Gになってます!バッテリーも110%に!!」
「それって嬉しいんですか?」
「うれしいですよ、これでハイテクの仲間入りです!」
「ありがとうございます!凜ちゃん!」
「ま...まあ。工作は得意でしたから…」
これからこの女と一緒に暮らしていくのか...暮らしながら元の世界に戻る方法を探さないと...
それにこの女はどうしても私の調子がくるってしまいます...
そんなこんなで私の異世界生活が幕を開けました―――
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