災害

 影の大蛇となったゴルドがしっぽをたたきつける。魔王の影もろとも、ノースとパルシュめがけてふりおろされた。噴煙が巻き起こる。

「パルシュ!!!!」

 アレポが叫ぶ。煙の中から、二人の姿が現れた。ノースがいう。

「あれは、二人の、いや……三人の力がなければ倒せん」

 魔王は今度は煙となり上空にまきあがり、巨大になったその顔だけをみせてその様子を見下ろした。

「ハハハハハ!!これはよい……“魔物”になったか、ゴルドよ!」

 ゴルドは三人を見下ろし、その異様な姿となり蛇の額にとりこまれた顔面から言葉をはいた。

「お前たちは“秘密”を吐く前に“処分”しなければいけない……これ以上の罪は、償いきれない……魂の牢獄に幽閉されるのはごめんだあ!!!」

《ドズウウウン》

 横に薙ぐようにふられたしっぽが、パルシュとノースに直撃した。しかし、その衝撃はをパルシュはシルドの魔法でとらえ、ふんばった。

「小癪な!!」

 ゴルドは何度となくしっぽを振り下ろす。しかし、パルシュは覚醒したようにシールドを構え、その攻撃をもろともせず、膝をまげ、腰をおとして耐える。

「ぐぐぐぐ!!」

 トマスは、アレポをみてその肩に手をかけた。

「アレポ」

「……」

 アレポは、気を失ったかのように呆然としている。

「……君は罪を負っているが、君自身の罪ではない」

「でも……私が……」

「アレポ、私が力を貸しているからパルシュは力をつかえる、だが彼にも限界がある、君が早くめをさまさないと」

「……」

 トマスはアレポにむかい、ある昔話を始めた。

《ドスン!!!ドスン!!ドスンッ!》

「くそっ……」

 ノースは、パルシュの後ろで何かの準備をしているようだった。魔法陣を地面にかいている。

「何を……ノース」

「もう少し、もう少しだけ耐えてくれ……そうすれば……」

「そんなこといったって、俺がこんなに自由に魔法が使えるのは……あの時以来」

「あの時?……」

「パルシュが魔法をつかって、お前の親が巻き込まれて死んで……俺は……」

「ふ……」

「!?」

 ふと、ノースは手をとめた。

「ふははは、ははははは!!」

「何を笑ってんだ、お前の両親だぞ!!」

「そうか、お前たちは真相をしらないんだな……この村の醜さを……村長の汚点を、それはそうか」

「何いってるんだ?」

「いや、いい、あの化け物を殺したらすべて話してやろう……腐ったルールと、やつが捻じ曲げていた“神”の概念についてな」

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