分断

「……」

 アレポは悔しそうに、表情を隠すように頭を隠していた。台地を囲うように集っていた村人たちも、悲しそうな顔をしていた。

「でも、彼の両親はそれをつぐなったじゃないか」

「もう彼は、罪を償っているのでは……」

 その声をかき消すかのように魔王が叫んだ。

「“この台地”に“罪人”として入ったものは、もう逃げられぬ運命にある……断罪の儀式で命を失うか“決闘の勝者”として生き残るかしかない、いまからお前たち3人に権限を与えよう……それは……殺し合いをして生き延びた人間が生き残るというルールの権限だ」

 アレポ、ゴルド村長、ノースの三人が驚いた表情を見せる。

「!!」

「だがしかし……“処刑”は私の気分次第だ……娘を救った心意気はよし、だがお前は、両親がいけにえになることをだまってみとどけていた、“その罪”どうとらえる」

 パルシュは、魔王にそう尋ねられ、言葉を失った、そのうちにも魔王は、考え事をしているようにアゴにてをあてる。パルシュは、腰にさげている剣に手を伸ばそうとした。だが、ふとそれをやめると、魔王をまっすぐみた。

「私の両親はいっていた、両親こそが……子供を生贄にするという風習を終わらせた二人だと……だから、責任をとったまで」

 魔王はふむ、とうなずくと、剣をしまった、だがパルシュが安堵すると、再び剣にてをかけふりあげ、パルシュの上からふりおろそうとした。

「パルシュ!!!」

 咄嗟の事で、パルシュは動けなかった。

《ブシャア!!!》

 暗闇の中で液体が飛び散る音がした。

「ふむ……甘い事をほざくと思えば、やはり、自身としての能力も大したことのないガキが、ただ大人を頼っただけの事か……」

 魔王がふるった剣は周囲をやけこがし、そして、その噴煙の中から、人影があらわれた。しかし、その人影は倒れていなかった。それどころか、人影は二つあるのだった。

「何!?」

 魔王が動揺する、と、前方の人影が、剣を構え、後ろの人影を守っているのがわかった。前方の人影は、ノースだった。

「ノース!!どうして」

 パルシュがいうと、ノースは答えた。

「お前は弱い!!俺が生き残るための、コマになってもらわなければいけない」

「でも、村長ゴルドだって……」

「……」

 その後方で、ゴルドが起き上がる、ゴルドは、自分の目、鼻、口、あらゆる穴という穴から黒い煙をはきだしていた。その煙は細長くのびていき、魔王の後ろで、村長の顔面は、その頭部にそえられた、巨大な鎌首をもたげる蛇となった。

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