パルシュの決意

「そうだな、やるしかないか」

 正面をむいて、魔物を見つめるパルシュ。しかし魔力は限界に近くなっていた。

「うおおおお!!!お前らがいなければ、こんなことにはならなかった、私の“罪”は暴かれなかったはずだ」

 叫ぶゴルド。ノースは、祖父を見下したように吐き捨てる。

「ふん、いまさら図々しい」

 パルシュは、耐えきれずにトマスをちらみした。トマスはすべてを悟っていたかのように、パルシュをじっとみつめてにやりとわらった。

“パルシュ……お前はこの攻撃をよけるだけでいい”

“!?”

 みると、トマスはアレポにふれ、アレポの目は白くひかり、その手の中で魔力がつむがれ、まるで繭のような形状になっている所だった。

“お前、アレポに何をした!!”

“何もしていない“お前”に加えた術以上の事は……これは、彼女の意思だ”

“だが彼女は……”

“お前は勘違いしている、彼女は、お前が思うより自分の力を制御できる、お前は過去を勘違いしている……それよりパルシュ、提案がある”

“何だ!!”


 ふと、その提案を聞いたパルシュは、一瞬力がぬけたようになった。が、自分を呼ぶ声で意識を取り戻す。

「パルシュ!!パルシュ!!」

「!!」

「どうした、もう少しこらえろ、俺ももう少しで力が溜まりそうだ」

「わかった!!」

 パルシュがしっかりと耐えているので、ノースは必死で魔法陣を完成させようと急いでいた。そして、いざ魔法陣を発動させようとしたその時だった。ノースは、腹部に違和感を感じた。

「すまない……ノース」

「パルシュ……何を!」

 ノースの腹部を抱きかかえるようにして、パルシュはその場から一歩さがった。その瞬間だった。

《シュウウウウ……ズドオオオオオオオ……》

 まるで雷を何倍にも威力をたかめ、束ねたかのような閃光がはしった。それは、アレポの手から発されたものだった。

「グウォオオオ!!」

 怪物と化したゴルドの断末魔の叫びが聞こえる。そして、閃光が台地と森をかけぬけたあとには、ただえぐられたかのような痕跡がのこったのだった。

「…………」

 そこにいたすべての人間が息をのんだ。だが、その瞬間、雄たけびが響いた。

「きさまああああ!!!巫女ともあろうものがあああ!!!」

 と、天井の魔王が叫んだ。パルシュは、それをみすえて、ノースの両手を天井の魔王に向けた。

《ズオオオオオオン!!!》

 灼熱の炎の柱がたった。そして、一帯をおおっていた黒い影が同時にきえたかにおもえた。その中に、一つの奇抜な、虫のようなドローンが浮かんでいた。

 

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