断罪

「懺悔せよ、さもなくば貴様に待ち受けるものは……死あるのみ」

 パルシュは、言葉を失った。

「全部、俺のせいだ……俺が……彼女を、アレポをそそのかしたから、アレポはあんなことに」

 アレポは呆然とした。

「何、なんのこと?」

「いや……アレポ、俺たちはよく遊んでいただろう、あの村の裏の森で……あそこは魔物のレベルも低いから、俺たちはよく遊んでいた……大人たちはヤヤ神の山で祭りの準備をしていて……」

「そんなの、何度だって」

「違うんだ、アレポ……お前が一度だけ記憶を失ったことがあったろ」

 アレポは振り返る。たしかに一度だけ、遊びの最中に記憶を失ったことがある。目を覚ますと、パルシュに膝枕をされていて、大人たちが心配そうに自分をのぞきこんでいた。

「何か、あったの?」

 大人たちは、額に汗をながしていて、しかし、何くわぬ表情を無理してつくっているようでもあった。パルシュにも尋ねる。皆、口をそろえていった。

「何でもない、突然君が意識をうしなったので、皆で介抱していたところだ」

 アレポはそれ以来そのことを不思議に思わないようにしていた。たしかに奇妙なところはあった。妙な魔力の痕跡をかんじたし、巨大な獣が横たわっていたようなきがする。が、すぐにそのあとまた力尽き、きがついたら診療所のベッドにいたのだった。


「だめだ!!いえねえ!!」

 パルシュは、倒れて四つん這いになった。そのとき、パルシュの耳をかすめるようにして、魔王が剣を顔面の横に突き刺した。

「言え!!!」

「……」

 パルシュは、アレポのほうをむいて、苦笑いした。

「許してくれ……アレポ、だが一番心配なのは、許しではない、おまえが絶望する事だ……アレポ、お前が気を失うまえに、俺たちは巨大な、その場に不釣り合いな高レベルの“フタアゴオオカミ”に遭遇した、2メートルは優にある全高をもった狼で、俺は死を覚悟した、だがアレポ、お前はちがった、勇敢に立ち向かっていき……つきとばされた……そして、大木にうちのめされ、体から尋常じゃない血がながれ……お前は巨大な光に包まれたかと思うと、まるで別人のように協力なマナを放ち、目は赤くひかり、髪は宙をまうようにうごき、そしてあの獣を仕留めた……」

「まって、何の話なの?それなら別に……」

 アレポが話を遮ろうとしたが、パルシュは、はっきりといった。

「お前の強すぎる魔力が、人を巻き込んで、殺めた」


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