集合

 朝になると、パルシュは目をさました。台地は黒いオーラに覆われており、そこをかきわけるように、右手が真っ黒の男が近づいてきた。それはノースである。

「久しぶりだな」

 右手をあげ軽く会釈をすると、どすり、と彼は台地に腰をおろした。つづけて、村長がやってくる。彼は体から真っ黒なオーラを放っており、心なしか目が虚ろである。


 やがて、黒い影が天空からおりてきて、あの巨大な魔王の形になり降り立った。マントをして、ヤギの角、どんな狂暴な肉食動物より鋭い牙、ガチガチにおりかさなった鉄のような鱗。彼はおりたって、突然笑いだすのだった。

「カハハハハ……人間が罪を犯せば犯すほど、私たちの立場はよくなる」

 そして、その横に勇敢にも立ち向かうものがいた。それは、トマスだった。強い足取りで意気揚々と、それを、強者故の余裕か、傍目にしながらも

「ふむ」

 とさして取り合わない様子の魔王。トマスは魔王のすぐ前でとまると、そのまま、翻ってこちらをみた。

「!?」

 アレポは、驚いて思わず叫んだ。

「あなた、味方じゃなかったの?」

 魔王はにやにやと笑いながら、答える

「ふん“巫女”よ、お前がいなければ“盟約”は果たせなかった、褒美に教えてやろう……この“トマス”“ギフトマン”こそが“災禍の祭り”“災厄”を果たすための切り札“罪人のシャーマン”なのだ」

「罪人??」

「それは長くなるだろう、だがその前に、罪について洗いざらいはかせなければいけない、まずは……村長と、その息子……」


 ふと、魔王がふりむく、すると、奇妙にもぶくぶくと村長がふくらんでいるようにみえた。それは徐々に、生物の内臓のように膨らみ、魔王の元へ近づいていく。やがて、獏さんした。その瞬間、内部から村長ではなく従者の男があらわれ、魔王に近づき、魔王の首をひきさいた。


 静まる人々、やがて、魔王の姿が散ったかにおもえたが、また元の体にもどり、従者は一瞬たじろいだ瞬間に、すさまじい轟音をきいたかとおもうと、体中を光で貫かれた。

「うわあああああ!!」


 魔王はすぐに人型に復帰してひとこと。

「ふむ、泥人形か」


 それと同時に、人々の中からざわめきがおこった。

「お前がいかなきゃ俺たちがしぬのだ」

「村のために洗いざらいはけ」

「従者は死んだぞ!!」

「さんざんいままでいいおもいしてきただろうに!!」

 数々の罵声をあびながら、檀上においたてられるようにとびだしてきたのは、こちらこそ、本物の村長だった。

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