夢の終わり。
パルシュは、自分の行いを思い出していた。燃える家の前で立ちすくむアレポに。しかし戸惑いもあった。"秘密"を抱えたまま、彼女に何をいおうか。だが、もはや罪は積み重ねていた。なぜなら、彼女のためといいながら、自分の中では冒険者になり、いずれ英雄になりたいという想いが渦巻いていたのだから。
そんなふうに逡巡していると、彼女の頭部がゆっくりとふりむいてきた。そして彼女は、笑いながらないていた。
「パルシュ……全部……燃えちゃった」
彼はすぐに近づいた。そして彼女を抱きかかえた。彼女は泣くのをやめなかった。「ひいっ!!」
後ろから叫び声がきいてふりかえる。トマスは、片方のパルシュがつれてきたとますの額に手を伸ばす。するとそうされた方は、体の足のほうから腐ってくちていく、それは植物の腐敗そのものだった。草や梢、土や根となり崩れ去る。
「パルシュ……」
「ん?」
「私……怖いわ、何か、とてつもない事がおきようとしているみたい……トマスは”罪の償い”だといっていたけれど……トマスが、私は彼が、何か巨大な悪夢をつれてきたように見えて仕方がないの」
「……いや……悪夢は……これまでも見てきたじゃないか」
そして夜がせまっていった。悪夢が加速する、夜が。
「キャアアア!!」
パルシュの家に泊めてもらったアレポは、叫び声に目をさました。パルシュの部屋に行くと彼は寝ぼけていた。
「どうしたんだ?大声をだして」
「違う、私じゃないわ」
声は村の中央から響いていた。そして、急いで二人が着替えて外にでる。人だかりができていて、その中央に何か巨大な看板のようなものが立っている。
パルシュは急いで人込みをかき分けそれを見て、絶句した。またアレポも口元を隠した。
「!!!!」
「ヒィ」
そこには、ルアンスとイベラの遺体が磔にされているのだった。
そして依然、暗雲は村をおおっており、その雲の一部が村に降り立った。それは角の生えた、まさに魔王といったいでたちの影となった。人々は、たじろいだ。影はいう。
「これは“罪”だ、”罪人”がおかした殺し、しかし、村人たちよ、”村長”"孫"をさしださなければお前たちもいずれこうなるだろう」
人々の中でざわめきがおこる。そして、人々の目は自然と殺気だって、段々とそれは態度と声にあらわれた。
「村長は?」
「知っているものもいるだろう」
「隠されている」
「早くさしだそう」
すると、村の奥から、大声が響いた。
「わしはここだ!!」
ずけずけと人だかりの間をかきわけ、長老は人々の中央にたって、”影”と対面する。
「私は“罰”を受けよう、だが条件がある……ある人間も”罪”を隠しておる、彼と決闘をすること、それが条件だ」
影は答える。
「面白い、それはだれだ」
「パルシュだ」
「……」
人々はいっせいにパルシュをみる。パルシュは、沈黙する。影は首をひねった。だがいった。
「彼も罪がないとはいえない、彼一人の命ならば、たやすくさしだそう」
「では……正午までに、わしはあの”処刑の台地”に向かう」
「いいだろう」
そういいつつも、魔王は右手を剣の形にかえた、人々は、悲鳴をあげぱーっと散り散りになる。
"ザシュッ"
村長の首がはねられた。群衆の叫びが響く。が、それが地面に落ちると、人々はまた静かになった。
「泥人形の魔法だ」
先程のパルシュの使った魔法と同じだ。それは土界になり、人々を安堵させたのだった。
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