狂騒

 頭が回らない。

「うわあああああああああああ!!!!」

 自分の悲鳴だけが、世界に響いている。

「ぎゃああああ!!なんで、ああああああ!!」

 こんな事なら、父親など、家族など最後まで信じるべきではなかった。

「うああああ」

 父親を目指して冒険者になろうとしたが、こんなところで、死ぬなんて、しかし、その思いとは裏腹に、頭はうごいて、片手はすぐに止血の魔法陣を組んで、血をとめた。手はぐにゃぐにゃになっている。

「くそ、くそおお!!!」

 左手はバッグの中のものをあさる。なんでもよかった、すがるものさえあれば、あれも、これも、すべてなげつけた。だが父親はひるまなかった。くそ!!

 だがふと、頭が一瞬冴え、考えた。さっき、なぜ逃げたときに襲われなかったのか、ピンときた彼は、背中にあるものをもちあげ、それを父親だったものに見せた。

「フゴウ!!!!」

 彼は鼻をならし、そしてひるんだ。周囲のウバ族もまた、皆ひるんだ。それをいい事に、彼はその得たいの知れないものに、自分の魔力を込めた。

「うおおおおお」

 光りだす先端。やがてそれは太陽ほども明るくなると、ウバ族はひるみ、散り散りになっていった。そして、最後に残った父親だったウバ族は、こう言い残してたちさった。

「冒険者ナド……目指すナ」

 ばたり、そうして彼は意識を失ったのだった。


 また、ウバ族に連れ去られたアレポは、気絶し、目を覚ますと洞窟の中にいた。

“カシャカシャ……”

「だれ?」

 だれかが、食事をしている音がきこえる。

「パルシュ?あなた……どうしてここに、助けに来たの?」

 人影は近づいてきて、自分の傍にすわり、皿を差し出した、よく見てみる、ウバ族とも思えない。

「“罪刈り”を見るのは初めてだろウ、あの部族は“罪”に厳しい、最初にコンタクトをとっておいてよかった」

「その声は……」

「私だ……、私の贈り物は大事に持っているかな?もうすぐ“災厄”がくる、それは捌きだ、ひとまず君は、これをのみたまえ」

 差し出されたものは、おいしそうなシチューだった。


彼女はおきあがり、岩肌を背もたれにしてシチューをのんだ。

「ゴホッ、ゴホッ」

スープをよく見る、すさまじい魔力が煮えたぎるようだった。

「これ、何なの?」

「私の魔力を込めた、むせることもあるだろうが……いい薬だ、ゆっくりのめ」

「どうして、助けてくれたの?」

「お前には役目がある」

「でも……私、私は、災厄をよぶだけだわ、貧乏神なの、昔から、いわれていた」



 

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