貧乏神 エリー
思い出すのは子供の頃だ。自分が能力を使おうとすると、いつもそれは形にならなかった。魔力人以上あるが、その方向性を指定できない。だから魔法に関する仕事はできないとあきらめた。そんな時にパルシュだけが自分を助けてくれた。いじめや大人たちの目から自分をかばうために“いつか自分が冒険者になって彼女の力を生かす方法をみつけてみせる”と言い張った。その明るいパルシュに押されて、大人やいじめっ子たちは徐々に私にやさしくなっていった。
「パルシュだけの力ではないと思うね」
「え?」
「君は、“選ばれし巫女”だ」
「何をいっているの?」
「私があげた玉を持っているだろう、あれは魔力の形を変えるものだ、だが選択が迫られる、君は選択をしなければいけないだろう、それは、君にとっても彼にとっても、苦しいものかもしれない、もっとも、私は君さえ無事なら何でも……」
「パルシュは!!」
「え?」
「その選択でパルシュは、どうなるんです?」
「どうって……選択は僕にもわからないし、いや“彼女”ならわかるかもしれないけれど」
「ヒントを下さい!!」
「ヒントって、そんな事はない、だってあれは厳粛な……」
「なら、私ここで……この崖から飛び降りて死にます」
「!!?」
ふと、傍らをみると洞窟の外、崖になっている場所のそばに、彼女は立っている。
「いや……ちょっと、その」
「本気ですよ!!」
「……」
ふと、トマスは顔を右手でおおった、そして右をむいたり下をむいたりしたあと、上をむいて、やがて肩を震わせたかとおもうとケタケタと笑いだし、覆っていた手をはずした。
「あははは、はは、あははははは!そうか、そうだったのか……」
「何ですか?」
「いや……そんなにいうなら、彼女にきいてみてもいいかもね……君なら見えるだろう、ちょうど龍脈も近いし、僕の魔術で召喚しよう……ただ“ノイズ”はひどいと思うが“人間”の君を龍脈に近づけるのは酷だからね……」
ふと、後ろに気配を感じたアレポは振り返る、そこには、見知らぬ、頬に鼻の模様のペイントのある美しい少女が現れたのだった。
「誰?」
「トマスの恋人……エリーよ、いまから、私のいう事をよく聞いて、あの殺戮を見たでしょう?老人のほとんどは殺された、この村はもう終わる……あなたには、できるだけ良い選択をしてほしいの……あなたの思う、最良の選択をね」
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