聞き取り調査
「と、言うわけで俺たち異世界の殺人鬼を追ってるんだ。
放課後の保健室、事件の聞き込みのために、当摩は単身で加奈美のもとへやって来ていた。彼女は養護教諭、保健室の先生だ。
「う~ん、
加奈美は今年でちょうど三十路を迎える妙齢の美女だった。青みを帯びた長い髪に優しい人柄を感じさせる目元。唇には艶がある。
バストは大きく、お尻もデカいのだが、ウエストは
カジュアルな白シャツに黒のミニスカート、そこに校医らしく白衣を着ている。
加奈美はスマートフォンを取り出すと電話をかけた。すぐにつながったようでそのまましゃべりながら保健室の奥へ歩いて行く。
しばらくして戻ってきた。
「彼女、自分に答えられることなら協力したいって、明美ちゃんは強い娘ね。それでもこのことは絶対に他言しないで」
「うん、オカ研というか神奈ちゃんも秘密は絶対に漏らさないって」
加奈美は真剣な表情を浮かべて小さく頷く。
「それで、聞き忘れていたけど、どうやって明美ちゃんにたどり着いたの?」
「最初は冒険者ギルドの事件の調書で、これって明美ちゃんじゃないかって、そんで神奈ちゃんが占って加奈美先生に聞けばわかるって」
「
「まあ……神奈ちゃんだからね」
二人でしばらく談笑をしていると、保健室に黒髪ロングの女の子がやってきた。大人しそうな印象で、制服を校則通りに着ている。こう言っては悪いんだがなんだか痴漢のターゲットにされそうな女の子だなと当摩は思った。
なんとなく委員長っぽい感じがして、眼鏡が知的に見えるタイプの娘だ。服の上からだとそれほどでもないように感じるが、当摩はその巨乳を見破っていた。
場所を保健室奥のカウンセリングルームへ移す。明美は少しおどおどとしていた。
「そ、……そのっ。黒崎さんじゃないんですか?」
「あっ……そっ、そうだね。男の俺じゃ話しにくいよね。神奈ちゃんは今、異世界のほうで調査をしてるんだ。
「い、いいよ。大丈夫……当摩君なら信用できるから」
「えっ……うん、ありがとう」
明美はゆっくりと話し出した。夕暮れ時にポーションの材料になる薬草を採りにいこうとしていた時だった。突然黒ずくめの男が現れて、目が合った瞬間相手の左目が光りそれを見たら身動きが取れなくなった。
「魔眼を使ったのか」
「私、魔術には詳しくないけど、あの光った目は魔術じゃないかなって思った」
現実世界への緊急脱出も使えず、男はすぐそばまで来ると明美の身体をまさぐりはじめた。完全に手慣れていて、少女を自らの欲望を満たすためだけの道具としてしか見ていないのがわかったという。
「今思い出してもゾッとする感じ、鳥肌が立ったの」
必死に身体に動け、動けと念じていると、辛うじて右手だけが動いた。そして腰の短剣を引き抜くとそれを相手の左目に突きたてた。
男はぎゃっと悲鳴をあげると、次に恐ろしいほど
「本当に頑張ったわね」
「あんな男に
「でも、辛かったね」
当摩が優しく声をかけると、明美はポロポロと涙をこぼした。当摩はしばらく彼女をそっとしておいた。
やがて泣きやむと明美は顔をあげる。
「あいつを罰することができるなら、私はなんでも協力するわ」
「それじゃあ、襲われた場所と、前後の行動を教えてもらえるかな」
当摩は彼女の話を丁寧にメモに取った。
「ありがとう、この情報は無駄にしないよ」
「お願い、あいつを倒して、痛い目を見せてやって」
必ずねと当摩は約束した。
※
明美からの聞き取りを終えた当摩は、神奈たちに合流した。今は冒険者ギルドの個室で作戦会議中だ。
「これ、明美ちゃんからの情報」
「ありがとう当摩、助かったわ」
皆が囲んでいるテーブルにはグレイルの街周辺の地図が置いてあり、そこにいくつか赤ペンで印がつけられていた。
「これ、事件現場の位置?」
「そうよ。奴はどうやら街で女の子を物色して、ターゲットが街から出て行ったところで襲っているみたい」
「それがけっこう
と梨花が言った。彼女もさっきまで被害者から聞き取りをしていたそうだ。
犯人は入念にターゲットを観察しその行動を予測していて、必ず好みのタイプの十代の処女の女の子だけを襲っているという。
「ターゲットの識別に魔術を使っている可能性が濃厚、複数人の被害者が魔眼を使うところを見ているわ」
「次に出現するところはわからないの?」
「それなんだけどね、何らかの妨害魔術を使っているんじゃないかと思うのよ」
「神奈ちゃんでもわからないの?」
「むしろ、わたしだから解らないのかもしれない。こちらの術式を読んでいるんじゃないかしら、それだとしたら犯人に心当たりがあるわ」
「その犯人って?」
神奈と同等の魔術師だとでも言うのだろうか。
「真祖の吸血鬼ブラッディ・マリーよ」
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