次の冒険は国家プロジェクトです
「あれ? 神奈ちゃん今日は休みか」
当摩がつぶやく。
朝のホームルームが終わり、神奈の欠席が知らされると、教室は
神奈ははっきり言って宇宙飛行士になれるほどの健康優良児だ。学校を休むことなんてほぼ皆無だった。
「なんだか神奈ちゃん、お国の仕事のヤバイやつ引き受けて外国のスパイとかに命を狙われてるんだって」
梨花は昨日のエッチが良く効いたのか肌艶がよい。彼女も神奈とならぶ健康優良児だ。
「それで学校休んでるの? その仕事って?」
脇に座っている京史に尋ねる。
「ああ……ある密教系の
「もしかして、周辺国と揉めてるからアレやろうとしてるの?」
「ああ……
「あちゃぁ……神奈ちゃんがやるんじゃ半島や大陸の人間が黙ってないね」
「そんなにヤバいの?」
当摩は少し青ざめた顔になる。
「
「それを神奈ちゃんがやるんだ……」
「俺たちオカ研メンバーは神奈ちゃんのお守りに守られているから、一応大丈夫だと思うが、それでも人質にされる可能性があるから注意してくれ」
「はいよ~やれやれだわ」
「神奈ちゃん本人は大丈夫なの?」
そう聞くとどうしても神奈が心配になる。
「神奈ちゃんが恐れているのは、自分が学校にいる状態で、教室ごと毒ガスとかで攻撃されないかを心配してのことだ」
「そんな過激なことを?」
(こわっ……キンタマが縮んだ)
「ああ……神奈ちゃん自体は延命の魔術で百歳を過ぎるまで死なない。神奈ちゃん自体を殺害したいなら、まずこの魔術を解呪しなきゃならない、これは相当に困難なことだ。しかし生徒の皆の安全までは保障されていない」
「う~ん、心配だな~敵が神奈ちゃんの住居を標的にすることは?」
「神奈ちゃんの工房は何重にも結界が張り巡らせてあって、悪意あるものは侵入できない。キーになる呪具がないと見つけることは不可能だ」
「それって二人は持ってるの?」
「ないわね……」
「僕もない」
「う~ん、神奈ちゃんの住所ってわからないのかな?」
「ちょっと前に神奈ちゃんからもらったバースデイカードにも住所は載ってなかったしね」
「ふ~ん、それどんな奴?」
「ラッキーアイテム的な幸運効果のあるカードよ。この魔法陣のやつ」
そういって梨花は一枚のカードを見せる。手描きで描いたとは思えない綺麗な魔法陣が描かれたカードだった。
「あれ? 住所
「えっ⁉ どこ?」
「こっちの裏面」
「…………載ってないわよ」
「僕にも見えない」
しかし、当摩にははっきりと住所が見えた。無言でスマホのメモに写す。
そして、その日の学校では特に何も起こらず放課後を迎えた。オカ研の活動をどうするかは各自に任された。
※
「それで当摩はのこのこと
神奈が眉根をよせる。
三大魔女の工房というからには、さぞかし妖しげな実験器具などがあるのかと思っていたが、ごく普通のマンションだった。
入口のインターフォンで管理人室へ呼びかけると初老のおじさんが応対してくれて、神奈の知り合いだというと驚いていた。
「だって……心配だったから」
「あのね……この工房に張ってある結界は、お母様の最高傑作ともいえる大魔術なの、それをあっさり破って……もう」
神奈は少し
「まあいいわ、心配して訊ねてくれたのだから、お茶くらいは出すわ」
そういって神奈は紅茶を出してくれた。
「なにこれ⁉ メチャメチャ美味いじゃん、お茶うけのクッキーは手作りなの?」
「まあね、クッキーなんて簡単よ」
美味くてついつい手が伸びる。そんな当摩を神奈は少しあきれたような顔で見た。
「こんな感じでわたしの工房は大丈夫、心配いらないわ。むしろ問題なのは異世界の方ね」
「あれ、異世界で殺されても召喚勇者は死なないんじゃなかったっけ?」
「そうね、異世界では召喚勇者は基本的に死なない、多くの召喚勇者が魔王の軍勢と戦えるのはそのおかげ、あちらでは肉体も魔法で出来た霊魂の入れ物だから、霊が傷つかない限り死んだりはしない」
「あるの? 霊を傷つける方法が」
神奈は一口だけ紅茶を飲み、真剣な表情で顔をあげた。
「アジアの某独裁者が権力を
「どっ……どうやって」
「
「虫とか蛇とかを戦わせて作る毒だっけ?」
「大体あってるわ、それを毒針ってまんまな名前で呼ばれてる、魔法武器に
「その魔法武器って……」
ゴクリと当摩の喉が鳴る。
「かすり傷しか負わせられない代わりに、魔法障壁を貫通できるの」
「刺されるとその毒で死んじゃうのか」
「霊的な毒だから、わたしが刺されても危ないわ」
「その毒針ってのは普通に買えるの?」
「普通に武器屋で買えるわ、魔法使い系のジョブの使い手が自分の属性の魔法が効かない時用に、一応毒を塗って装備している、そんな人も多いわ」
ふむふむと当摩は頷く。
「神奈ちゃんは持ってないの?」
「わたしは全属性の魔法が使えるから必要ないの」
「さすがは神奈ちゃん、ということは異世界での活動もしばらくお休み?」
神奈はなぜかニヤリと笑う。
「いいえ、おびき出して身の程をわきまえさせるわ」
ちょうど飲み終わった紅茶のカップをソーサーに置く、赤い目が
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