異世界転生

はるむら さき

序章

生まれた時から、自分が特別な存在だと気づいていた。

なにせ、言葉も解さぬ赤子の頃より、強大な魔力を秘めていて、さらには前世の記憶も持っていた。

前世の私が言うことに、これは自分が前の世界で、子どもの頃から慣れ親しんでいた、ゲームの世界と瓜二つ。

この世界の理も、この先に起こる出来事も、枝葉の先に至るまで、すべて自分は理解している。

さあ、これから先の人生は、前世と違って薔薇色よ。末は勇者か、賢者か、はたまた魔王か。いずれにしても、とにかく歴史に名を轟かす、とんでもない者になるぞ。

なにせ、世界を知りつくしているのは、この世でひとり、自分だけなのだから。


そうして期待を胸に抱いて、この世界で生きること、はや数年。

自分は相も変わらず、みんなと同じ、ごくありふれた人間なのだと気づかされた。

なぜか。

この国では、掃除人から、パン屋の親父、そこらを歩く猫に至るまで、みんなが強大な魔力を持ち、これまた、前世の記憶を持っていて、世界の出来事を知りつくして生まれてくるらしい。

国中の誰もが、未来を知っているのだから、この人生も、自分の思い通りになるはずがない。


国の名前は『アナザーワールド』。

なんとも安直なネーミングだが、これ以上の名もないだろう。

ここは、異世界転生者だけが集う国。

あらためまして。ようこそ、あなた。

君も今日から、この国で、特別じゃない人間を始めよう。

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異世界転生 はるむら さき @haru61a39

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