第13話
あれから数日が経ち私とエリザは今まで通り学園に通っているが周囲では変わったことがいくつかあった。
まずは王太子が学園に来ていないこと。
あの事件の後から一度も姿を現していないのだ。
正式な処分が学園から出ていないにも関わらず学園に来ていないことから、生徒の間では退学になるのではと噂されている。
次にリュシアンが王太子の側近を辞めたことだ。
今回の一件で側で見守るだけではだめだと思い自分から申し出たそうだ。
辞めてしまって大丈夫だったのかと本人に聞いてみると、
「遅かれ早かれ私はクビにされたでしょうから」
と清々しそうに笑いながら話していた。
「それにいい報せがあったので」
「?」
そんなことをリュシアンが言っていたが私には一体なんのことだか分からなかった。
あとは生徒達が私に向ける視線が変わったことだ。
あの試合で聖魔力の力を実際に見たからだと思うが、私への好意的な視線が増えた。
好意的なことは嬉しいのだが学園ではどこにいても注目されてしまうようになった。
一学年上の先輩方にも私の噂が流れたようでわざわざ教室まで来て私を見ていくのだ。
そんな日々に少し嫌気が差してきた頃のある日の帰り、馬車の中でエリザと話していた。
「あのね明日は学園が休みでしょう?オルガの予定が大丈夫であれば会ってほしい人がいるのだけどどうかしら?」
「明日?明日は特に何もすることないから大丈夫だよ」
「それならよかったわ」
「それで会ってほしい人って誰なの?」
「それは…ごめんなさい。その人はお忍びで来る予定なのよ。明日会う時まで待ってもらえるかしら?」
「そっか、分かった。じゃあ明日会うの楽しみにしてる!」
「ありがとう」
――翌日
昼食を食べた後、私は部屋でのんびり過ごしていた。
「ねぇ、フェニ様。モフモフしていい?」
『ぬぅ。またか?』
「だってー」
『…仕方ない。少しだけだぞ』
「やったー!ありがとうフェニ様っ!」
そうやって私がフェニ様と遊んでいると部屋の扉がノックされた。
「オルガ、私よ。入ってもいいかしら?」
「エリザ?どうぞ」
私が返事をするとエリザが部屋の中へ入ってきた。
「あら聖獣様こんにちは。…オルガ、またモフモフとやらをしているの?」
「うん!本当にフェニ様のモフモフ最高なんだよ。ね、フェニ様」
『…うむ』
「もう、聖獣様が困ってるわよ?モフモフもほどほどにしなさいな」
「…はーい」
『ふぅ、助かったぞ』
私はモフモフを止めてフェニ様から手を離した。
名残惜しいが仕方ない。
また後でモフモフするぞと心に決めたのだった。
「そういえばエリザどうしたの?」
「そうだったわ。本題がまだだったわね。そろそろ昨日言った方が到着するのだけど今からいいかしら?」
「あ、そろそろ来るんだね!じゃあお出迎えしなくちゃ」
「いえ、私達は部屋の中で待ちましょう。本当に内密でいらっしゃるから出迎えはしないことにしたの」
そして私とエリザは応接室へと移動して待つことになった。
一体どんな人が来るのだろうかとドキドキしながら待っていると、扉がノックされルシウスさんが入室の許可を求めてきた。
「入ってもいいかな?」
「ええ、どうぞ」
「失礼するよ」
扉を開けてルシウスさんが入ってきた。
そしてルシウスさんに続いて男性と女性が部屋へと入ってきた。
(え、二人なの?…って、この人達ってまさか!?)
二人の顔を見た私はある可能性に気づき勢いよく立ち上がり頭を下げた。
「オルガ!?」
「オルガさん!?」
エリザとルシウスさんが私の突然の行動に驚いていた。
(これだけそっくりなら私にもあのお二人が誰だか分かるよ。うぅ、前もって教えておいてほしかった…)
「オルガ君、頭を上げなさい」
「そうよ。ここには私達しかいないからいつも通りで大丈夫よ」
「…初めまして、公爵様、公爵夫人様」
そう、エリザが私に会ってほしいと言っていたのはバーマイヤ公爵様とバーマイヤ公爵夫人様のことだったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます