第11話


「バーマイヤ・ミストリア組の勝ち!」



 今日は学年合同の魔力操作の授業だ。


 授業と言うよりは模擬戦と言う方がしっくりくるのは置いといて、今日一日全ての時間を使って行われている。


 今まで学んだことを実践に活かすことがこの合同授業の狙いだそうだ。


 また二人一組なのは連携を学ぶためだとイサーク先生が言っていた。


 私はエリザとペアを組みこの授業に臨んでいる。



「うぅ、エリザごめんね…」


「もうオルガ気にしないの」


「で、でもぉ」


「聖魔力持ちのオルガが後ろにいてくれるから私は安心して戦えるのよ?それに魔法が来るタイミングや方向を教えてくれるじゃない」


「だってそれくらいしか分からないから少しでも役に立ちたくて…」


「それで十分だって言ってるの。もし私が怪我することがあってもオルガがすぐに治してくれるでしょう?」


「うん…」


「さぁ次の試合まで休憩しましょう」



 この会話から察してもらえると思うが、私が持つ聖魔力は回復に特化しており攻撃は不向きだ。


 そんな戦力にならない私の分までエリザが頑張ってくれているのだ。


 エリザは風魔力の持ち主で公爵家の血筋もあり魔力量も豊富だ。


 最近はフェニ様(聖獣様の愛称だ)から教わった魔力増量方を実践しているようで更に魔力量が増えたのだとか。


 それにおそらく入学前から魔力の扱い方を学んでいたのだろう。


 魔力を使って魔法を発動させるのだがとても手慣れているように見える。


 そんなエリザが怪我をすることはなさそうに思うし、そもそも相手に怪我を負わせるような強力な魔法は使ってはいけないと事前に先生から言われている。


 これを破れば学園を退学処分になるそうだ。貴族にとって退学などという不名誉なことは避けたい。


 だから今まで一度も退学者は出ていないそうだ。


 要するに私がエリザの役に立てることはないということになる。


 でもこれではダメだと思い少しでも役に立てるようにと思いついたのが相手の動きを伝えることだ。


 ある日本を読んだ後に目が疲れたなと思うことがあったのだが、その時にふと目に回復魔法をかけたら疲れがとれるかなと思い少しの魔力で試してみると、疲れが取れただけではなく視力も一時的に良くなったのだ。


 そのことを思い出した私は試合中に自分の目に軽く回復魔法をかけると相手の動きがよく見えるようになり、エリザに魔法発動のタイミングや方向を教えることができたのだ。


 でも実際に避けたり防いだりするのはエリザなので私が役に立ってるのかは分からないのだが。



(でも回復魔法の使い道が増えてよかったと思うべき?)



 私は周りにエリザの他に誰もいないことを確認してから腰に下げているポーチに向かって話しかけた。



「フェニ様起きてる?」


『ん?どうしたのだ?』



 ポーチの中から顔を出したはモフモフな小鳥こと聖獣のフェニ様だ。


 フェニ様はあれからずっと私の側にいる。


 魔力を分けてあげるのは夜寝る時だけなのだが、私の側が心地よいらしく学園に付いていきたいと言われたのでこのポーチに入ってもらい一緒に学園に通っているのだ。


 フェニ様の力もずいぶんと回復してきたようだが、加護を新たに与えられるほどの力はまだ戻っていない。



「聖魔力って回復魔法以外使えないの?」


『今さら何を言っておるのだ?回復魔法以外にも使えるぞ。そもそも聖魔力の本質は回復ではなく護りだぞ?』


「えっ?回復魔法が使えるのが聖魔力じゃないの?」


『確かに回復魔法が使えるのは聖魔力だけだが、回復魔法はおまけにすぎぬ』


「「!?」」



 聖魔力=回復魔法だと思っていたのだがどうやら違うようだ。


 エリザも私と同じ認識だったようで驚いている。



『ふむ。我にとっては当然のこと。そのように考えたこともなかったわ。まさか人間が聖魔力をそのように認識していたとはな』


「じゃあフェニ様にとって聖魔力は何に使うのものなの?」


『…聖魔力の真骨頂は護りの力、防御魔法だ』


「防御魔法?」


『そうだ。防御といってもただの防御ではない。悪意あるもの全てから護る"結界"を発動させるのが聖魔力による防御魔法なのだ』


「結界…」


『だが結界を発動させる条件があってな。護りたいものを心から護りたいと強く願わぬ限り発動しないのだ』


「…エリザ、多分次の試合も私は役に立てなさそうだよ」


「もう、まだ気にしていたの?」


『その試合とやらでは心から護りたいと願えないのか?』


「うーん、難しいかな。あっ、もちろんエリザのことは護りたいよ?でも怪我しないように魔法の威力は弱くするように決まってるって知っちゃってるから心から願えるか自信がないの」


「確かにそうね。私でも難しいと思うわ」


『それなら仕方ない。オルガはエリザベートの応援でもしておれ』


「フェニ様ひどいっ!」


「ふふっ、オルガに応援されるなら頑張らなくてはね」


「エリザまでっ!もうっ!」



 楽しく?しゃべりながら次の試合が始まるのを待っていたらどうやら私達の番がやってきたようだ。


 なんの嫌がらせなのか今日最後の試合になるそうで、みんなに見学されながら戦わなくてはならないらしい。



「そ、そんな…。みんなに役立たずのところを見られるなんて恥ずかしすぎる…!」



 私自身は目立ちたくなくても状況がそれを許してくれない。


 いつも目立たないことを望んでいるのになぜか目立つような状況になってしまう。


 私はどうしても目立ってしまう星のもとに生まれてしまったのかと本気で思ってしまう。



「オルガが聖魔力使いだというのはみんな知っているのだから誰もそんなこと思わないわよ。…それよりも問題は対戦相手よ」


「どうしてこの状況で対戦相手が王太子なの。棄権したい…」



 更に最悪なことに対戦相手が王太子とリュシアンのペアなのだ。


 リュシアンはいいとしても問題はあの王太子だ。


 私とエリザ相手に何をしてくるかが全く想像できない。


 とりあえず貶されることは確定だろう。



「決まってしまったものは仕方ないわ。行きましょう」


「…無事に終わりますようにっ!」



 そして私とエリザは試合場所へと向かうのだった。

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