第16話 登場
――しまった!
そう身構え様とした頃には既に彼女との距離は縮まっていた。
「っ」
しかし、伸びていたはずの彼女の手が私に触れる事はなく、代わりに感じたのは……。
――え?
後ろに誰かいる気配と、肩に置かれた大きい手の感触だった。
「?」
不思議に思ってそのまま顔を上げると、そこにいたのは……。
「ラ、ラファエル殿下」
そう、ラファエル王子だったのだ。
でも、王子の表情はいつもの様な爽やかさはなく、無表情で……いつも表情豊かな王子とは全然違った。
その違いがあまりにも大きくて……思わずゾクッとしてしまう。
「な、なんであなたがここに?」
「俺がどこで何をしていようが君には関係のない話だろう?」
――笑っている。
だけど、その笑顔はどこか彼女をバカにしているかの様だ。
「あ、あなたがここに来るのは不可能なはずよ! だって……」
「ミカエルたちが俺の足止めをしているはずなのに……と?」
王子の指摘にミキアは思わず「うっ」とうろたえた。
――え、つまり宰相の息子たちが王子を待ち伏せしていたって事? 彼女の指示で?
本来であれば将来国を背負うはずの彼らがたった一人の……それも同い年の女の子の指示に……。
その事実に私は思わず青ざめた。
――いや、それだけ彼女の『魅了』という魔法が脅威という事。
そして、コレで分かったのが彼女の言う『魅了』という魔法が珍しい「固有魔法」だという事だ。
基本的に魔法を使える人はみんな同じモノを使う。
そこに得意不得意が存在して、難易度に応じて使える使えないが出てくる。しかし、中には彼女の様にその人にしか使えない魔法というモノが存在するのだ。
――でも、確かに使いようによっては国家転覆も夢じゃない……という事ね。
にわかには信じがたかったけど、現に王子はそんな魔法にかかった彼らに足止めをされている。
「彼らは全員仲良く医務室行きだ。魔法で眠らせようにも効かなかったからな」
――それってつまり……。
魔法ではない別の方法を使ったという事。いわゆる「実力行使」という事だろう。
――さすが、魔法以外も鍛えてらっしゃる。
「観念しろ。お前の家の人間も、裏で糸を引いている人間も。関係者は全員捕まえて仲良く治療を受けさせている」
「……」
――え?
そこで私は王子の発言に違和感を持った。
――全員? え、彼女は「誰かの指示」で動いてたんじゃ……。今の言い方じゃ「彼女自身で今回の一件を企てた」と言っている様に聞こえるのだけど。
そう思い、王子の方を見ようとしたところで……。
「全部。全部あんたたちのせいよ!」
「!」
「え?」
ミキアの大声で彼女の方を向くと、突然大きな水のかたまりがものすごいスピードで私たちの方へと向かって飛んできた――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます