第14話 彼らとの本当の関係


 私と王子との婚約は……特に大きな混乱を生む事はなく、案外すんなりと周囲に受け入れられた。


 ――いや、そんな事よりも……という感じなのかも。


 どちらかと言うと、私たちの事よりも「聖女の登場」と「彼女の取り巻きとなってしまった男性陣」の方にみんなの注目が行ったという方が正しいかも知れない。


 ――なんていうか……。


 みんなの彼らを見る目が……とても冷ややかだ。


 ――まぁ。私も「なんであの子が?」みたいに思われてはいると思うけど。


 それでも一応「国王陛下の公認」をもらっているのが大きいのか、私に直接何かをしてくる人はいない。


 ――下手をすると、王族に喧嘩を売ったと捕えられかねないし。


 それに引き換え聖女の彼女にはそれがない。


 一応、彼女自身も貴族で「聖女認定」はされているらしいけど、決して身分は高くない。それなのにも関わらず彼女の周りには男性。しかも身分の高い男性のグループにちやほやされている姿を見たら……。


 それは他の令嬢たちにとっては面白くないだろう。


「――全く。いとも容易くなびいて。これじゃあ将来が心配だな」


 そして、ここにもそんな今の彼らを見て嘆いている人が一人。


 ――でも、そう思っても仕方ないかも。


 私は彼らと王子の関係を表面上でしか見た事がない。ひょっとしたらもっと強い「絆」の様なモノがあるかも……。


「まぁ。今回の件で全員が廃嫡になるかも知れないな」

「そう……なのですか? 全員?」


 ――前言撤回。どうやらそこまでの情けはないらしい。


「全員……は言い過ぎかもしれないけどな。ただ、そうなる可能性は高いだろうな」


 将来この国を支える立場になるであろう彼らの姿を見ていると……確かに「そうなるかも知れない」と思えてしまう。


「元々、どうにもあいつらとは合わないところがあったけどな」


 一つに学校での過ごし方や振る舞い。


 この学校では基本的に「この学校にいる間は身分など関係なくみんな平等に」という考えがあった。


 ――もちろん、全部が全部とは言わないけど。


 そこで王子はこれを機にクラスメイトたちと交流を深めるつもりだった。


 きっとそれは「学校生活を楽しみたい」という気持ちと「自分とは違う身分の人の事をもっと知りたい。将来のためにも」という気持ちがあったのだろう。


「……」


 しかし、私の記憶では王子がグループから離れる事はほとんどなく、またいつもグループの誰かと一緒に行動をしていた様に感じていた。


「――彼らが許してくれなくてね」


 それは小さい頃からそうだったらしく、王子はそれをとても億劫に思っていたらしい。


「だから、今はとても気が楽だよ。色々好きに出来るし、みんな話しかけてくれる。まだ遠慮がちなところもあるけどな」

「ふふ。そうですね」


 確かに、みんなまだ遠慮しているところはあるだろう。でも、思いのほか話しやすい王子に、みんな驚きと親しみやすさを感じているのも確かだ。


「それにしても……あいつらはまたサボりか」

「その……様ですね」


 朝のホームルームが終わり、一時限目の授業が始まるというのに、ミキアや宰相の息子たちの姿がどこにも見当たらない。


「全く。転校してすぐに『この学校で一番の成績を取って立派な聖女だと認めさせます!』とか大見え切っておきながら」

「よほど自信があるのでしょう」


「それは……ちゃんと勉強しているから……という意味でか? それとも……」

「さぁ。どうでしょう」


 そう言いながら小さく笑うと、王子はミキアたちがいないにも関わらず気にも留めていない教師をチラッと見て「……少し、探りを入れてみるか」と小さく呟いた。

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