第3話 お試し……じゃないよね?
「で、でもなんでまた急に?」
「急ではないさ」
お婆ちゃんの言葉に思わず「え?」と答えると……。
「ソフィは今年十五になるだろ?」
「う、うん」
――本当に気が付けば……だけど。
何か特別な事があるワケでもない。でも、何気ない日常を過ごしている内に、あっという間だった。
「十五になれば魔法学校の試験が受けられるんだよ」
「あ、そう……なんだ?」
――し、知らなかった。
私としては「ずっとこのまま生きていくんだろうな」とずっと思っていた。
だから……というワケではないけれど、心のどこかでは「魔法を学びたい」という気持ちは諦めていて、魔法学校の事は頭のちょっとした片隅に置ていた。
「――実はね。私の元教え子が魔法学校の教師をしているらしくてねぇ。それであんたの話が出たんだよ」
「え、その人に私の事を……? な、なんて言ったの?」
――ま、まさかとは思うけど。
お婆ちゃんに限ってそんな「私の魔法の事」については言わないはず……とは思いながらもやはり気になってしまう。
「何。ただの世間話さ。せっかく素晴らしい才能がある子と一緒に生活しているのに私が足かせになっちゃいなかって心配って話をね」
「そ、そんな事……」
――ない!
そう言い切れるくらい、私はお婆ちゃんに感謝している。
「まぁ、話をちゃんと聞きなさいな」
私の視線から何を言いたいのか感じ取ったお婆ちゃんは、穏やかな表情でたしなめる。
「私がそこまで言う子であれば魔法学校の試験を受けてみないかって話になってね。幸いちょうど王都にその子が使っていた家があって、今は新しい家に住んで誰も住んでいないしもったいないからもし合格したらそこに住んでくれないかって言われてね」
「え、タダなの?」
――正直、タダより怖いモノなんてないと思うけど……。
なんて言葉が出そうになったけど、お婆ちゃんはその人の事をよく知っているらしく「まぁ、何かあったらそいつに言えばいいさ」とあまり気にしていない様子だった。
「まぁ、断るに断れそうになかった話でもないし、お試しって事で受けてみないかい?」
――お試しって……。
口では「お試し」なんて言っているけれど、実際のところは「受けるしかない」という状況にさせられている……そんな気がする。
「それって、もう決まってるじゃん」
「ははは。そうだねぇ」
なんてお婆ちゃんは笑いながら答えたけれど、これで分かったのは、とりあえず私はお婆ちゃんと一緒に王都に引っ越して魔法学校に入学するための試験を受けなくてはいけないという事だった――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます