第10話 聖女について聞いてみた
私が王子の手を取る取らない関係なく「王子と婚約の話が出る」という時点で、国王から呼ばれる事は分かっていた。
「……」
――結局……手を取れなくて固まってしまったし。
正直、あの状況は女の子であればみんなあこがれるシチュエーションだったはずだ。しかも、相手は本物の「王子」である。
――普通なら……飛びついていたのかな。
でも、私は手を取らなかった。
ただ、その理由が……実は自分でもよく分かっていない。もちろん「身分の差」とか「条件とか期限付き」とかあるとは思うのだけど……。
――多分、そうじゃない……と思う。
そして、ラファエル王子自身も私が手を取らないだろうと分かっていたのか、小さく笑って「やっぱり」という表情をしていた。
――で、今に至る……と。
「まさか国王から呼びされるとはねぇ」
今回は内容が内容なだけに保護者としてお婆ちゃんにもついて来てもらった。
――そういえば……。
「お婆ちゃんは王宮に呼ばれた事。ないの?」
「ん? 一度だけあるね」
「ん? ああ一度だけあるねぇ」
「え、一度だけ?」
これは意外だ。
「ほら、昔一度だけ話しただろ? 私が貴族になるかどうかと問われた話」
「う、うん」
「まぁ、それが国王からの提案だったって話さ。ただ、今の国王じゃなくて先代だけどねぇ」
「そ、そうだったんだ」
「王国側としては魔法。ひいては魔力の強い人間を自分たちの味方にしたいだろうからねぇ。まぁ、気持ちは分からんでもないけどねぇ」
「……」
――確か。お婆ちゃんの若い頃ってダンジョンとか冒険者の全盛期だったんだよね。
今は平和となり、さまざまな整備が整っている今では冒険者も希少な存在となっているけど、お婆ちゃんの若い頃は数々の冒険者が様々なダンジョンに出向いていたという。
「お婆ちゃんは……その『聖女様』に会った事。ある?」
何気ない様に……感づかれない様に……と思いつつ「あ、でも。後で詳しい説明されるよね?」という気持ちも持ちつつ尋ねると……。
「ああ。あるねぇ」
「そ、そうなんだ」
「とは言っても、一国に一人。様々な奇跡を祈りだけで叶えるのは純粋にすごいと思っていたんだけどねぇ。当時は」
「え、当時は?」
「後でその奇跡が全て魔法によるモノだと分かってねぇ。でもまぁ。その頃。私が活躍していた頃じゃなくてあの森で暮らし始めた頃には『聖女』はどちらかというと『象徴』という意味合いも強くなっていてねぇ。でも奇跡だと信じて疑っていなかった人々はものすごく怒ったらしい。まぁ『聖女』の数も減っていたが」
「そ、そうなんだ」
「この国の話ではないけどねぇ。その『聖女』は国外追放になったって話さ。しかも、赤ん坊もその王子の間に生まれて間もない頃だったかねぇ」
「ふーん」
「……もう興味をなくしたのかい?」
「ううん。ひどいなって。奇跡であろうとなかろうとそれが魔法の力であろうと頼っていたのは事実なのに手の平を返して国外追放は……あんまりだなって」
「まぁ、今は平和に暮らしているらしいけどねぇ。むしろ『聖女』をしていた頃より心穏やかだとか」
「……随分と詳しいね」
なんて言うと、お婆ちゃんは「噂話なんて嘘も本当も湧き出てくるものさ」と笑い、そんな話をしている間にあっという間に王宮に着いた――。
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