第8話 私を呼んだ理由①
見た目は普通の部屋。置いてある家具も必要最小限で、どこにでもある様な物だ。
「……」
――こんな部屋。あったんだ。
学校に入学して数日とは言え、自分の用事がなければ基本的に教室から動かない私にとってはかなり新鮮な光景だ。
「適当に座って」
「あ、はい」
そう言われて私は自分の目の前にある椅子に座った。
「……」
――椅子自体はしっかりしているけど、ものすごく高級ってワケでもないみたい。
特別な装飾もされていない家具は「私の家にある物よりももしかしたら安いかも知れない」そう思えてしまうほどに「普通」だった。
――まぁ、私の家にある物は元々カーネロさんが使っていた物だけど。
なんて事を考えていると、ラファエル王子から視線を感じた。
――この視線。やっぱり。
何となくそうではないかと思っていたけれど、今のでハッキリとした。
「……」
試験の時に感じた視線の正体は……ラファエル王子だという事に――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……あの」
「気が付いたみたいだね」
――こんな言い方をするって事は、王子自身も分かっていたって事だよね。ただ。
「……はい。でもなぜ?」
――どうして「私」を見ていたのだろう。
ラファエル王子ともあろう人が一平民である「私」を見ていたのか……そのそもそもの「理由」が分からない。
――た、確かに筆記では満点を取ったけど。
しかし、それは歴代の受験者の中でも方で数えられる程度ではあったものの、存在はしている。
――だからと言って何か特別な待遇をされたワケでもないし。
もちろん、そんな話も記録も残っていない。
――逆は……あったみたいだけど。
これこそが「実技の成績優秀者が優遇されている」と言われている由縁でもある。
「単純に……君に興味を持ったから……かな」
「え?」
「座学は満点なのに実技は平均点。パッと見た感じは『普通』という印象を持たれると思う」
「じゃ、じゃあ……」
私が「なぜ」と言う前に、王子は「だけど」と言葉を続けた。
「――君の場合。試験結果がまるで狙ったのか様に平均値過ぎる。全てが」
「……」
「基本的に、多少の得意不得意は出るモノなのに、君は全てにおいてド真ん中だった。僕としてはあれは逆に目立って見えたよ」
「……」
――そんなつもり……なかったのだけど。
現にこうして言ってきたのはラファエル王子が初めてだ。
「自分の得意分野以外に興味がない教師陣は何も疑問を持たなかったのは……まぁ分かる。他の受験者たちも気にしていなかったみたいだし。ただ僕は……」
「気になった……と」
そう言うと、ラファエル王子は「そういう事」と笑顔で返した――。
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