第6話 今のところ……
「ふぅ」
その『視線』の主は入学式が終わり、あっという間に数日が過ぎた時に分かった。
「……」
ある程度の時間が過ぎると、どうやらクラスの中でも何個かの『グループ』という集団が出来る。
まぁ簡単に言うと、ただ仲の良い子たちが集まっているだけなのだけど……。
「キャー!」
ふと廊下から聞こえた女子の悲鳴。
教室内で仲の良い『グループ』の中でも目立っているのは、やはりラファエル王子を筆頭としたグループ。
――まぁ、当然と言えば当然だよね。
何せ彼の周りにいるのは、宰相の息子に騎士団長の息子。魔法医療団の息子に大商人の息子……といったそうそうたる顔ぶれ。
本当によくこの学年にこれだけの大物のご子息が集まったモノだ……と思うほどである。
――まぁ、商人の息子に関しては一年留年しているらしいけど。
その事に関してはある程度の金額を積めば一年だけ留年が出来るらしい……というあくまで噂の域を出ない程度の話ではある。
――で、私はその中の一人。医療師団の息子ににらまれている……と。
大方、私の座学の成績を目の敵にしている様な節があるけれど……そんな風に思われてどうしようもない。
そこはあくまで「本人の努力」という事にしてもらいたいモノだ。
――でも……。
正直、彼から「負けません!」と言ったような宣戦布告を受けた……なんて面白い話はなく、またあの試験で感じた『視線』とはまた違ったようにも感じた。
――今もたまに感じる事があるけど。なんていうか……そんなねっちこい感じじゃなくて……こう「ふーん。あいつが……」って感じの……。
いわゆる「確認」とでも言えばいいのだろうか。そんな感じのモノに近い。
――まぁ、その内分かるか。
なにせ学校が始まってまだ数日。さすがに気持ちの悪い視線であれば、相手を探ろうと思うけど、決して悪意のあるモノではない。それならば放置しておいても問題はないだろう。
そして私はというと……。
「……」
何となく……いや、実際は分かりきってはいたけれど、どこの『グループ』にも入らず、友達も出来ずに一人で過ごしていた。
――まぁ……。
元々人里離れて生活をしていた私にとっては、話の合う人がいるとも思っていなかったし、そもそもの性格も相まって一人の方が合っていた。
――学校も全寮制じゃないし。
原則としては寮生活となっているけど、強制ではない。でも、ほとんどの学生は寮で生活をしているらしい。
――まぁ「社会勉強」とか「人脈づくり」という意味で『寮生活』というのは……ありかもね。
ただ、私はお婆ちゃんが心配という事もありしていない。
――そういったところも含めて友達が出来にくいのでしょうね。
寮で生活をしていれば、どこかしらで顔を合わせるタイミングも増えるだろう。そういった時に普段とは違う一面を知る機会も増える。
お婆ちゃんは「気にしなくてもいい」と言っていたも、私が気にして勉強に支障が出たら本末転倒なのだから仕方ないと思って欲しい。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「うーん。帰るか」
ちょうど授業も終わりあっという間に放課後になり、私はまぁまぁ大きめの独り言を言って軽く伸びをした。
「……」
当然、私を待っている様な友達はいない。
――まぁ、そうだよね。
そもそも、私の今の状況は非常に友達が作りにくいと思っている。
それは寮の事もそうだけど、きっかけは入学式が終わりすぐに授業が始まる前に座学の教師から筆記試験の事を暴露されてしまった。
その結果。私は魔法医療団の息子に睨まれてしまう……という事になってしまったのだ。
――まぁ、正直「言わないでよ」とは思ったけど。
これでは何のために「試験番号」というモノがあるのか分からない。
――もういいけどさ。
言われてしまったものはどうしうもない。そんな現状に「ふぅ」と小さくため息をつきながらゆっくりと帰り支度をしていると……。
「ねぇ。君、魔法得意だよね?」
いつの間に現れたのか私の目の前に爽やかな青年……いや、ラファエル王子が立っていた――。
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