第5話 試験を終えたその日
ただまぁ「三日」というのはあっという間に過ぎてしまうモノでありまして……。
「それでは……始め!」
「……ん?」
私は試験が行われる会場の「魔法学校」に行き、実技と筆記の試験を受けた。
――まぁ。驚き……だった。
試験の結果は当日に分かる様になっていたのだが、結果だけ言えば「合格」ではあった。
ただ、試験内容の話をすると……正直な話。こちらが拍子抜けしてしまうほど簡単だった。
――あの程度で悩むって……この国の魔法のレベルって大丈夫なのかな?
むしろそんな心配をしてしまいそうになったくらいである。
「そりゃあ、教えたのは私だからねぇ。あの程度でつまずいてもらっちゃこっちが困るねぇ」
――ごもっとも。
帰宅後。さっそくその事をお婆ちゃんに言ったら大きな声で笑っていた。まぁ、それもそうか。
「実技の方はどうだったんだい?」
「ああ。そっちは周りに合わせて上手くやったよ。まぁ、王太子殿下と後は……数人くらい目立っていたかなってくらい」
――違う意味でも……だけど。
まぁ、それについて言う必要は……ないだろう。
「ああ、今年は王太子殿下が入学するのかい」
「そうみたい」
正直。魔法は出力を出すよりもその力を制御をする方が難しいとされている。特に最大出力が大きい私は特にそれが難しい。
――ただでさえ難しくて集中したのに女子の歓声やら視線がすごくてやりにくかったなぁ。
本当に……身分など関係なく、試験中であるにも関わらずとにかく女子の声援がすごかった。
――隣の試験会場だったのに聞こえてきたし。
実技の試験は五人一組で行われていたため、王子と同じ組になった人も当然いたとは思うが……なんともお気の毒な話だ。
「確かラファエル王太子殿下は次期国王とされていますが、現在婚約者がいなかったはずです。同じ学年でお近づきになれるかも知れないとなったら……それは大騒ぎになるでしょう」
カーネロさんは「やれやれ」と言いたそうな表情でゆっくりとお茶を飲む。
「……」
――いや、この人。学校の中でもそれなりに偉い人だったはずじゃ? 何で平然とここでお茶を飲んでいるんだろう?
なんて思っているのが表情に出ていたのか、カーネルさんは平然と「お構いなく」と答える。
――いや、お構いなくじゃなくて。
「私は学校の『教師』と言ってもあくまで特別講師ですので、ずっと学校にいるワケではありませんので」
「は、はぁ」
――いや、そういう学校の立場の話をしているワケじゃなくて……。
そう言いたいところだけど、何を言っても上手く逃げられるか誤魔化されると思い、それ以上は何も言わなかった。
「しっかし、王太子殿下と同じ学年とはねぇ……面白い事になりそうじゃないか」
――面白い……ねぇ。
「まぁ、自分より目立つ存在がいてくれて助かると思っているけどね」
コレは事実だ。私は王子が魔法を使っている所を直接見たわけではないけれど、目立つ対象がいれば、自然と視線はそちらに向く。
――だからと言って油断は出来ないけど。
「まぁ、それもそうだねぇ。筆記は満点を取ってもそこまでは目立たないだろうし、そもそも試験自体が実技に重きを置いているらしいからねぇ」
「――らしいね」
そう。実際に試験が終わった後に貼りだされた結果で、私が筆記で満点を取ったと分かってもそこまで騒がれなかった。
――別にそれは良いのだけど……。
「どうかしたのかい?」
「え、ううん? なんでもない」
その試験結果が発表された時。一瞬鋭い視線を感じた。
「……」
――あれは一体何だったんだろう? 多分、同じ試験を受けた誰かだとは思うけど……。
今まであまり人と関りを持った事のない私に心当たりなんて当然なく、一瞬だったこともあって「気のせい」という事にその時はした……。
でも、実はこの視線が誰によるモノだったかなんて……魔法学校に入学して割と早い段階で知る事になる――。
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