第42話


サミュエルの説明を聞いて内容を理解したヴィヴィアンだったが、つまりはヴィヴィアンは元々死んでおらず仮死状態になり、内部では力を溜めて回復していたということになる。


逆に呪いの力を取り込んで、解呪のような形で分解してこの環境に適応するための体になり、力を取り込んでパワーアップしていたと聞いてヴィヴィアンはゾッとする。


(わ、わたし……あそこまで刺されたのに死んでいなかったの?)


ジェラールの剣で二度も刺されておきながら、自分の力で治していたとなると驚きである。

だが、ヴィヴィアンはアンデッドらしい特徴も持っていた。



「でも、指が落ちてもくっついて治りましたよ!?」


「アンデッドの力をうまく取り込んだ影響だろう。マイケルやモネ達のように自らを治癒すればその力もなくなるはずだ」


「……!」


「もちろん生きた状態でな」



アンデッド状態もヴィヴィアンの力で元に戻ると聞いて目を見張る。

今すぐにこの力をすぐに手放せば、グログラーム王国に向かいラームシルド公爵や兄のマイロンに会うことができる。

すぐにでもマイケルとモネ、そして自身を治療しようとしたヴィヴィアンだったがピタリと手を止めた。


グログラーム王国ではジェラールとベルナデットが幸せに暮らしているに違いない。

体は元に戻ったとしてもヴィヴィアンの恨みや悲しみ、怒りは心の中から消えることはないだろう。

純粋な乙女心を踏み躙ったジェラールとヴィヴィアンを貶めて嘲笑ったベルナデットを許せるはずもない。


二人を懲らしめたい気持ちはあるけれど、皆に真実を知ってもらいたいと思った。


(マイケルやモネ、サミュエル様たちが悪くないってことを知ってもらわないと!)


大切な者達を一方的に傷つけられて、騙されていたことに大きな怒りを感じていた。

それに黙ってやられるなんてヴィヴィアンらしくないではないか。


そして今の状況を踏まえた上で二度とヴィヴィアンのような被害者を出さないためにも、ジェラールとベルナデットに復讐する。


(わたしはもう死んだことになっているのよね?もしかして、この方法なら……!)


ヴィヴィアンの今までの怒りをぶつけて、真実を明らかにする方法を思いつく。

とてつもない恐怖を与えて二人の悪事を暴く方法を……。



「サミュエル様」


「どうした?」


「わたし、自分を治す前にやりたいことがあるんです!」


「……?」


「一度、あの人たちには痛い目に遭ってもらわないと気が済まないわ」


「そうだな」


「ウフフ、あの人たちには絶望を味わって欲しいのです。その方法を思いつきました」



ヴィヴィアンの覚悟を決めた表情を見たサミュエルは僅かに目を見開いた。

美しく唇の端が弧を描いた。



「俺も協力しよう。話してくれ、ヴィヴィアン」


「本当ですか!?」


「ヴィヴィアンの願いはなんでも叶えたいんだ」



サミュエルはヴィヴィアンの腰を掴んで体を寄せると、反対側の手を取り、愛おしそうにこちらを見つめている。

美しすぎる顔が眼前にあり、顔を真っ赤にして硬直していたヴィヴィアンだったが、慌ててサミュエルから距離を取る。

このままだとドキドキして心臓が破裂してしまう、そう思ったからだ。

サミュエルはヴィヴィアンが離れて不満そうだが、ヴィヴィアンは咳払いしてから改めて意見を伝える。



「グログラーム王国から、ここが死の森に見えるようにしてもらうことはできますか?」


「ああ、もちろんだ」



サミュエルはそう言うとパチンと指を鳴らす。



「これで外からはまだ死の森に見えるだろう。まだ彼らにこのことはバレないほうが都合がいいということだろう?」


「はい、ありがとうございます!」



これでグログラーム王国からはいつもと同じ景色に見えているそうだ。

改めてサミュエルの魔法の力に驚きつつも、ヴィヴィアンはサミュエルにこれから自分がどうしたいのかを話していく。

するとサミュエルの唇がニタリと歪んだ。



「ほう……それはいいな。協力しよう」


「本当ですか!?」


「ああ、丁度グログラーム王国の王族にはお礼をしたいと思っていたんだ」


「サミュエル様、お顔が怖いです」



サミュエルは見たことがないくらいに怒っている。



「大丈夫だ。無実な国民を皆殺しにしようとは考えていない……傲慢な王族に罰を与えて裁くだけだ。それにヴィヴィアンを騙して嘘を言っている奴らに一泡吹かせたくないか?」


「……!」


「どうせならば、二度と嘘をつけなくなるくらいに懲らしめてやらねばな」



サミュエルはアーロとキーンに指示を出していく。

マイケルとモネもアンデッドのままヴィヴィアンに協力してくれることになった。



「では、ヴィヴィアンの復讐のために作戦を立てようか」


「わたし、はらわたが煮えくり返っているんです。皆さん、協力してください」


「もちろんです!」


「はい!」


「たっぷりと恐怖と絶望を味わってもらわないと……ね?」



ヴィヴィアンの笑顔はキラキラと輝いていた。

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