Chapter4 魔術と才能に関する考察(3)
思わぬところで落とし穴があったが、気を取り直して簡潔にまとめると、ユリアは天才である。
オレが想像していた以上に、様々な才能を秘めているようだ。
攻撃魔術こそ使えないが、戦いになれば、魔術で身体能力を上げて、物理で殴ればいい!
ちょっとというか、かなりオレの攻撃魔術への期待が裏切られたが、そこはそれだ。
戦うための能力は十分にあるということが、重要だ。
しかし、やりたいことばかりが増えていくな。
少し整理してみよう。
まず、この世界の常識を情報収集すること。
基本として科学的常識や社会的な常識は、前世の世界と大きく変わることはない。
生きるためには空気や水、食事が必要だし、重力があって、昼は太陽が昇る。
盗みや人殺しは忌避されているし、結婚や子供の誕生は喜ばしいこととされている。
それでもこの世界では当たり前な動植物の名前やこの国の決まり、法律なんかの具体的なことはわからない。そのせいで、うっかり非常識なことをしてしまうかもしれない。
オレの場合、前世の記憶のせいで先入観を持っているようなものだ。
『
手始めに、母親から文字を教えてもらうこと。
ひとまずは、父親の書斎にあった本を一人で読めるようになりたい。
この世界では、本はまだ
屋敷にある本の数は多くはないが、それなりの数の本が本棚に収まっている。
情報収集の意味でも、本からこの世界の知識を得られるようにしておくことは必須だろう。
前世ではネットワークを使えば、気になる情報を好きなだけ調べられたことを考えると、もどかしくはあるが。
次に魔術の特訓を続けること。
今のところ、国は安定していて、平和な時代らしく、日々の生活に問題はない。
それでも、前世の日本に比べれば、安全とは言えないだろう。
犯罪に巻き込まれる危険だけではなく、『グロリス・ワールド』と酷似しているからには、粗暴なモンスターも数多く生息している。
つまり、いつ、どんな危険な事態に遭遇するかわからない。
その際、オレが頼りにできるのは魔術だろう。
そのためにも、魔術を繰り返し使って、いざというときに魔術で解決できるように習熟しておくことも重要だ。
特に身体強化の魔術などは相性が良いのだから、それに慣れておく必要はあるだろう。
脚力を強めて逃げようとしたのに、脚力が強すぎて
もちろん、新しいルーン魔術をどんどん試して、できることを増やしていくのも大事だ。
しかもルーン魔術の特訓をすればするほど、オレの保有魔力量も上がる。
魔術を使うための魔力は、少なくて困ることはあっても、多くて困ることはないからな。
それから、体を鍛えること。
小さな頃から運動を習慣づけておけば、将来、運動音痴や体力不足になることはないだろう。前世では運動が苦手だった悪い思い出を塗り替えたい。
この世界でのことを考えるなら、きちんと戦闘技術も身につけたいところだ。
もちろん、オレにはルーン魔術があるが、いざというときのためにできることを多く持っておくことは大事だと思う。
前世の記憶の中には、格闘技の知識などもある。
しかし、きちんと習っていたわけでもない。あくまでスポーツとして観戦をしていただけだ。
実際に自分が同じように動けるとは思えない。
例えば、パンチにしても、ボクシングのイメージはあるが、どうやるのが正しいパンチなのか、どうすれば正しいパンチを打てるかはわからない。
それに、この世界では剣や
それをぜひとも学びたい。
剣術は男の子のロマンのひとつだよね。
問題は、貴族の令嬢として、剣術など野蛮な行為に興味を持つことが許されるかどうか。
中世的な世界のイメージとしては、「家長が絶対で、娘は政略の駒」みたいな価値観がまかり通っている可能性もある。
そこは大丈夫だよな…………娘にダダ甘な父親には感謝の気持ちしかない。
さらに、旅に必要な知識と技術を身につけること。
世界を旅して回ったりしたいと思っているが、これは両親が許してくれるかが問題だ。
女の一人旅、しかも良家の第一子となれば、箱入りのご令嬢コースまっしぐらでもおかしくない。
比較的自由にさせてくれそうな両親とはいえ、十五歳の成人になるまでは親元にいるのが普通のようだし。
ただオレは、バックパックをひとつ背負って旅に出ることに憧れがあった。
そのために、前世ではその手の情報コンテンツを読んでいたし、少しずつ貯金もしていた。
まだまだ目標金額には届かなかったし、
ルーン魔術があれば、旅をするのにも助かるし、楽ができそうだ。
だから、それ以外の必要な知識を得て、野外で困らないような訓練もしたい。
が、旅をすることの優先度は低くて、後回しだな。
旅をするには、オレはまだまだ幼すぎる。
早くても、成長してきちんと両親の許可がもらえる
そして、入浴を普及させること。そのためのお風呂を造ること。
お風呂は日本人の心です。
最後は、できる女の子の修行として、料理や裁縫などの家事を学ぶこと。
前世ではひとり暮らしだったので、最低限の知識と腕前はある。
料理については、前世の料理を作ってみたい。前世で好きだったトンカツやピザにも挑戦しよう。
今の食生活に強い不満などはないのだが、こう、魂に刻まれた懐かしい味というのがある。
まあ、
大雑把にまとめると、こんな感じか?
まぁ、新しい人生は始まったばかり、ゆっくりと頑張ろうか。
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