笑顔を描くハルス
https://kakuyomu.jp/users/sepstar/news/16817330665908346125
若い女性が恥じらうように笑っている絵、
どこかで見たことがありませんか。
オランダ人のフランス・ハルス〈1583-1666)の作、
「ジプシー女」1628年頃、58x52cm、ルーヴル美術館
このタイトルは後の人がつけたそうですよ。
今では娼婦を描いたということになっています。胸があいているからだということですが、どうしてそうなるのでしょうね。私は娼婦については詳しいことはないですが、この微笑みや洋服、髪型から考えて、農家の人ではないですか。
私は赤ちゃんにお乳をやって、やさしい目でわが子を見ている若いお母さんだと思いますが。
以前、フェルメールがこんなに人々に愛されるようになったそのきっかけを作ったのは、フランスの美術史家のビュルガーなのですが、そのビュルガーはフランス・ハルスをも再発見しました。詳しいことはここでは省略です。
ハルスとフェルメールが大きく違うのは、
ハルスは生前も、ハーレムという大きな町で、大画家として評価されていて、
作品もたくさん残っているというところです。
ハルスはベルギーのアントワープ生まれ。
宗教弾圧により、彼がまだ幼い頃、ハルス一家はオランダのハーレムという町に移住してきました。
ハーレムは商業都市、
フランドル地方に住む多くのカトリックやユダヤ人が移り住み、とても繁栄していたのです。
ニューヨークには今でも、アムステルダム通りとハーレムという地区がありますが、
十七世紀、オランダはニューヨークを管轄し、「ニューアムステルダム」と呼ばれていました。その後英軍に降伏し、町の名前はニューヨークになりましたが、通りと地区にはまだオランダ時代の名前が残っているということでいよね。
つまり、オランダを代表するような大きな町ハーレムで、ハルスは画家として活躍していました。裕福な市民階級が多く、彼らは集団で肖像画を描いてもらうのが流行っていて、
ハルスは引く手あまただったと思われます。
そして、彼の個性と才能がよく表れているのが笑顔の絵、彼はスマイルの画家です。
「リュートを弾く道化師」1623
https://kakuyomu.jp/users/sepstar/news/16817330665863586088
こういう表情あるある、でよすね。
じっくり見て、その「瞬間」を捉えているなぁ。これ、才能。
この絵と「ジプシー女」はルーヴルの所蔵です。ルーヴルはさすがによい作品を集めていると思います。
「笑う少年」1625
少年というより、子供ね。女の子みたい。
こちらもあるあるね。笑い声まで、想像できます。
こういう子を知っているけど、抱き上げるとふにゃふにゃで、思ったより細くて、
でも、何かにつけて笑い続けるのよね。こっちを指をさしたりして。
この絵、
筆づかいがはっきりと見えています。
印象派からはこういう描き方は普通ですが、
それ以前はキャンパスに、筆の跡が見えないのが絵の常識でした。
ハルスはその常識の壁をあっさりと壊している! すごいことです。
その効果で、この絵は近くから見るとラフですが、離れて見ると躍動感のある笑顔になっています。
ゴッホはハルスの絵に感動していたそうですが、その理由がわかります。
「微笑む騎士」1624、
こちらは注文作品かしら。
これまで騎士が微笑んでいる絵画なんてなかったと思うから、おもしろいね。
画家のアイデアなのでしょうか。
陽気な酒飲み1628-1630
このおじさん、
ハルスの友達でしょうか。
一枚描いてやるよ、なんてハルスが言ったのかな。
おじさんは酔っ払って顔を赤くし、「おれの絵かい」なんて少し恥ずかしがって、饒舌ぎみ。
ふたりで話しながら、絵ができていったという感じね。
ハルスという画家は筆を握りながら、自分も笑っていたのでしょうね。
時々、おもしろいことを言いながら、
きっと性格が穏やかで、人生を楽しく生きようと心がけていたような人。
子供が十四人もいて、
八十六歳まで生きたそうです。
ほんと、
笑顔はいいね。
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