印象派のアトリエ

https://kakuyomu.jp/users/sepstar/news/16817330665443517676


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近況ノートに、ふたつの絵画を紹介しました。

上は1965年、下は1970年にフレデリック・バジールによって描かれたもので、両方ともオルセーにあります。


下の「アトリエ」のほうは、当時の若い画家のアトリエとはいうものを伺うことができますし、またこの絵の中には、マネ、モネ、シスレー、ルノワールの姿を見ることができます。

彼らは、今では知らない人はいない大画家ですが、その頃は、マネ以外は知名度はありませんでした。

 マネは1863年に「水浴(後に草の上の昼食)と改題」で大スキャンダルを巻き起こしました。マネは若者たちの相談には乗っていましたが、印象派の画家ではありません。


この若者たちは、その頃はまだ「印象派」という呼ばれ方もされていません。そう呼ばれ始めたのは、モネが1872年に「印象 日の出」を描いてからです。

この画家の卵たちは、同じ画塾で知り合い、考えを分かち合い、時には一緒に暮らし、それぞれが自分の絵を産みだそうとしていました。


「バジールのアトリエ」を見てみましょう。


中央にいる特別に背の高い人物がバジールです。何も知らない人は、真ん中に、ジャイアント馬場みたいに大きな人がいるので、何かと思うでしょう。私は最初、バジールが「盛って」描いたと思っていたのですが、この部分だけはマネが描いたと、バジールが手紙で言っています。マネは写実主義の人なので、バジールはこんなふうにでかい人だったのでしょう。


帽子の人がマネ、マネはみんなの先輩格ですからね、キャンパスの絵について、何か語っています。

その隣りは私はシスレーだと思います。ルノワールが描いたシスレーが何枚もありますが、こういう顔でした。


そして、階段の上にいるのがモネ、

エミール・ゾラだという意見もあるようですが、この顔は怪我をしてベッドに横たわる上の絵のモネにそっくりです。

下にいるのがルノワール、

この時、ルノワールはバジールと一緒に住んでいました。バジールが安い値段で貸してあげていたようです。


その頃の、印象派の若い頃の作品を見るとよく似ていて、誰の作品なのかわからないことが多いですが、その後、それぞれが独自の道を行くことになります。ひとりを除いては。シスレーだけは生涯、その技法が変わりません。

また仲間の中で一番の期待の星だったバジールは、自分のスタイルを見つける前に、この世を去りました。


バジール(1841-1870)という人はモンペリエという南フランスの町の出身で、父親はワイナリーを営んでいたようです。バジールはドラクロアの絵を見て、自分も画家になろうとしたのですが、父親が許さず、パリで医学学校に進むという条件で、許してもらいました。やがて医学の道は捨て、絵に専念しますが、特に貧乏だったモネやルノワールとアトリエを提供したり、生活費を援助したりして、父親が出費をもっと抑えるように言われたりしていたようです。

彼はよく画家たちのモデルになっています。モデルというのはなかなか大変な仕事ですが、彼は辛抱強く、描くほうの注文通りにポーズしてくれたようで、とても頼みやすい人だったようです。


そんなふうに仲間から信頼され、愛されていたバジールでしたが、上のアトリエの絵の直後、普仏戦争に参加。前線に出た一日目に、戦死してしました。なんでも、指揮官が怪我をしたために、彼が代わりにその役目を務めたとか言われていますが、真相はわかりません。ただ人の先頭に立って進んだことは想像に難いことではなく、それにあの身長ですからね、撃たれやすかったことでしょう。

死亡の知らせを聞いて、父親はすぐに息子を探しにでかけ、戦場で見つけ、故郷に連れ帰ったということです。想像するだけで、涙です。


今日のニュースにも、ガザの病院が爆撃され、死者が多数出て、怪我をした子供を抱えて、必死に助けを求めて走っていく父親が映しだされていました。

どんな理由でも、戦争絶対反対。

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