カミーユのメドゥーサ

 今朝、 近況ノートにカミーユ・クローデル(1864-1943)の彫刻をアップした。まずはその説明から。

 タイトルが「ペルセウスとゴルゴン」で、カミーユが精神病院に幽閉される前に作ったもので、これが最後の作品だといわれている。これは大理石でカミーユの故郷の美術館に展示されているが、ブロンズのものはロダン美術館にもある。

 

 メドゥーサの顔は彼女自身。

 翼は随分と大きく、重そう。写真でははっきり見えないかもしれないが、左側に足が見える。

 短髪のペルセウスが手に持っているのは、盾の握りの部分で、ここに盾があったのだが、それがあると正面からふたりの顔が見えないことから、取り除かれたのだろうか。壊れたのだろうか。そこはわからない。メドゥーサの目を見ると石になるので、ペルセウスは金属製の盾に彼女を映しながら、その首を切った。

 ペルセウスが兜をかぶっていないというのは珍しいのだが、これはロダンがモデルなのだろうか。顔は似てはいないが、そう考えられる。


 カミーユも彫刻家で、ロダンの弟子だった。彼女の作品には物語性があり、それをロダンが盗んだと彼女は言っているそうだ。たしかに、カミーユと合ってからのロダンの作品には、物語性がある。でも、人から学ぶのは芸術家の習性だから、咎められることではないのかもしれない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 下の記事は私が前にブログに写真付きで書いたものです。

 ここでは写真なしなのでわかりにくいとは思いますが、そこは想像力で、よろしくお願いします。


 これがサンフランシスコのリージョン・オブ・オーナー美術館にあるカミール・クローデル(Camille Claudel 1864-1943)をモデルにした彫刻です。

どこかで見たことあるなあ、と思われた方もいらっしゃるでしょう。

制作したのはロダンで、タイトルはThe Thought(思考)。


カミーユはとても美しい人で、ダビンチにマリアを描いたものがありますが、よく似ています。


カミーユは子供の頃から土や石が好きで、彫刻家を志し、パリの学校に通っていました。

女性が彫刻家になるなんて考えられない時代で、母親は大反対でした。

初めは別の先生に習っていましたが、19才頃にロダンの弟子になります。やがてモデル、愛人になり、ロダンにインスピレーションを与えたといわれています。

彼はその頃制作上悩んでいたのですが、カミーユと出会い、「考える人」をしあげ、「カレーの市民」など、作品を続々発表します。


こちらはカミーユが作ったロダン像。これもリージョン・オブ・オーナーにあり、わたしが撮影しました。黒くてはっきりしないので、色を明るくしてみました。白いインクで、カミーユのサインがしてあります。かわいい字です。


ブロンズ像は型さえあれば鋳造できますので、いろいろな美術館にあります。こちらはイギリスにある像。これもリージョン・オブ・オーナーにある作品とは、感じが違います。ちょっと狡猾な感じがするような・・・。


これが、ロダンの写真


なぜロダンの肖像彫刻ばかりにこだわるかというと、わたしはロダンという人がどんな人だったのか知りたいし、カミーユがどんな気持ちでこのロダンを作ったのか、知りたいからです。


ロダンには長年連れ添ったローズという女性がいて、(結婚したのは晩年)子供までいました。生涯の伴侶として自分を選んだくれないことに怒ったカミーユは、彼のもとを去ります。妊娠していたが、彼が堕胎してくれと言ったからだとも言われています。そして、完全に別れたのが、1898年。


ロダンの顔像は1900年作、と書いてありますので、それが正しければ(「カミーユ・クローデル」という映画がありますが、その中では、付き合っている最中に、これを作ったことになっています。)、ロダンと別れてから、作ったことになります。どんな気持ちで作ったのかしら、と思います。

カミーユはその後、神経を病み、精神病院に強請入院させられました。状態がよくなり、医師が退院してもよいと言っても、母親が許可を出さず、死ぬまで精神病院にいたと言われています。


リージョン・オブ・オーナーのロダン像は、ちょうどわたしの目の高さにあり、鑑賞するのには最適です。だから、何度も周囲を回って、じろじろ観察しました。そばにいたどこかの子供が、ヘンな顔をして見上げていましたっけ。


写真ではそうではないのですが、実際には耳がとても小さい。鼻腔は大きく、ああ、ガイジンね。鼻の上が平らです。(映画で、ロダンを演じていたジェラール・ド・パルデューの鼻がそっくり)

髪ははげてはいないけれど、薄い。それに反して、あご髭がすごい。どうして?といいたい。

目はどこを見ているのか、わからない。

目があっても見てくれない。耳があっても聞いてくれない。つかまえたくても、つかまらない。

そんなロダン像に見えます。


カミーユはある時、自分の作品を打ち壊してしまったのですが、それでも90作品ほどは残っていて、パリのオルセー美術館にもあり、彼女のことを天才と呼ぶ人達もいます。

彫刻という荒っぽい男の世界に、物語性、ポーズの美しさ、子女の表情の魅力など、新しい風を運んできた彼女。それをキャッチして、ひとつ上のレベルまでもっていったロダン。

カミーユはもっと評価されてよいアーティストのひとりです。ロダンの偉大さはみなさんがもう知っていらっしゃるので、ここでは省略。次は、カミーユの作品について書いてみたいと思います。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る