第36話浜野佳子の音楽部リポートなど
私は、浜野佳子と申します。
瞳君の叔母で、子供の頃から、ピアノを教えています。
それと、瞳君の進学予定の音大で教授をしています。
本題に入ります。
瞳君の学園の音楽部の次期指導者は榊原さん(旧知なので、そう言います)と決まっておりますが、そのサブ指導者の職を受けました。
(榊原さんも売れっ子で多忙ですから)
瞳君への指揮指導と、ピアノ指導をします。
(演奏会本番のソリストを、榊原さんと話し合って瞳君にしたので)
オケ部員に言う前日、瞳君にそれを言ったら、例の困り顔です。
「恥ずかしいなあ、何か」
「公私混同かな、僕の知り合いばかりの先生だ」
「榊原のおっさんと、佳子おばさんでしょ?」
美佳母が、瞳君の頭をコツンしました。(なかなか、可愛く)
「文句は、ちゃんと指揮ができて、ピアノが弾けてから」
「足がつったんでしょ?情けない」
「それとも里香ちゃんの前で、怒られたくないの?」
(ここで、瞳君の肩がビクッとしました)
(やはり、本音は隠せないよね)
私は、美佳母から、瞳君を引き寄せました。
(奪い取った感じ)(瞳君が子供の頃から、これは好きだった)
「まあ、決まったこと」
「がんばってね」
(ついでに頭を撫でようとしたら逃げられた)
(やはり、高校生男子、既に彼女持ち)
そんな話の翌日、実際、瞳君の学園の音楽部に出向きました。
瞳君の指揮を見学します。(録画もします)
最初は、フィガロの結婚。
うん・・・いい感じです。
やはり、瞳君は、モーツアルトが上手です。
何より、リズム感がいい。
オーケストラ全体を、上手に操っている感じ。
少し音楽が軽いのは、仕方がない。
オーケストラが高校生で、曲もフィガロだから。
瞳君も、それを意識して、振っている感じ。
確かに、鈍重なフィガロでは、ダサいだけです。
(老年指揮者は、鈍重になりますが)
モーツアルトのピアノコンチェルトは飛ばして、次にブラームスのシンフォニーを振らせました。
うん、これもいい。
音のバランス(高音から低音までの響き)がいい感じです。
どちらかと言うと、低音部をしっかり鳴らせています。
だから、全体に落ち着いたブラームスです。(テンポも、ゆったり目ですし)
それでいて、管楽器も上手に鳴らさせています。
(・・・里香さんもわかりました、熱い目で瞳君を見ているから)
噂で聞くように、指揮のセンスも高いと、判断しました。
ひとりよがりの指揮でなくて、オーケストラの奏者を上手に操れるようです。
(こういう指揮者は、少ないのですが)(瞳君の個性かな)(協力したくなる人)
・・・聴いてばかりではいられないので、シンフォニーは二楽章までにしました。
サブ指導者として、指示を出します。(最初、緊張しました)
「高校生オケとしては、満点です」(ワッと笑みが広がって、私もうれしい)
「後は、一音一音を正確に、もっと周りの音を聴いて」
(はい!と大きな一斉の声です)
「全体の響きは、いい感じ」
「もっとダイナミックスをしっかりつけて」
(ここでも、はい!の一斉の声、気持ちいい)
「それぐらい、後は練習を積めばいいよ」
(高校生の笑顔は、気持ちいいなあ)
で・・・瞳君ですか?
私の話の途中から、苦しそうな顔です。
(おそらく、ふくらはぎが、つった)
(途中、かなり、踏ん張っていたから)
さて、指揮科の先生にも、この動画を見せます。
(面白いことになりそうです)
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