第34話沢村美由紀の、瞳の指揮リポートです。

沢村美由紀です。

瞳君の指揮は、初めてですが、すごく合わせやすいんです。

指揮棒の動きが、クリアで、わかりやすい。

言ってはいけないけれど、前任の石川先生の「フラフラして、やる気がない指揮」より、よほど「音楽」になっています。


「フィガロの結婚」は、音楽部全員からの「リベンジリクエスト」が3回。

長い曲ではないのですが・・・


・・・瞳君がアウトです。

ゼイゼイしているのは、まだいいけれど。

足がつったとか・・・情けないなあ・・・

今は、ヨタヨタと椅子に座っています。(筋力不足かも)


確かに、キレキレの指揮なので、脚の筋肉を使うのかな。

時々、踏ん張って指揮棒振りますしね。(かっこいいけれど)

このままなら、翔太先輩をトランペットに戻して、瞳君が指揮者でもいいかな。

(瞳君は里香先輩の隣にいたい、それはわかるけれど)

(フラれ女の意地悪思考?そうかな・・・ちょっとあるかも)


あ・・・瞳君が、ヨタヨタと椅子から立ち上がりました。

ブラームスを振るようです。

(翔太先輩が頷いているので、指示されたかも)


脚をブラブラとさせながら、指揮台にのぼりました。

可愛い声で、指示します。

「第一楽章を振ります」

「とにかく、やわらかく、ゆっくり、一音一音正確に」

「落ち着いて、お願いします」


瞳君の指揮棒は、その通りでした。

フィガロの時の鋭さとは、違う。

ゆったり、なめらかな感じ。

(でも、指揮棒の着地点が一定なので、演奏しやすいんです)


私はクラリネットですが、吹きながら、指揮棒を見て、また、弦の人の動きを、しっかりと見ます。

で・・・驚きました。

弦の人が、同じような身体の動きです。

(揺らし方、弓の動かし方が揃っています)

(だから音楽も揃う)

(弦の人も、瞳君の指揮で弾きやすいんだと思う)


木管の私たちもそうですが、金管の人たちも、目の色が変わりました。

(つまり、弦がいい感じなので、超マジになった、ということ)

音楽全体も、ブラームスらしい、深遠で、心を揺らすような、いい感じです。


第一楽章が進み、明るく荘重な部分になると、瞳君の指揮棒は、超クッキリになります。

(吹きやすいなあ・・・ブラームスの意思が、瞳君の意図が、そのまま指揮棒になっている感じ)

なめらかな部分は、また、わかりやすく「なめらかに」振りますしね。


いろいろ、繰り返して、第一楽章は、柔らかで素敵な和音で終わりました。


瞳君は、第二楽章は、振らないみたい。

(全員からの拍手は、あるけれど)


翔太先輩と話しています。

「トランペット」の単語が聞こえたので、やはり、吹きたいのかな。

(里香先輩の隣に戻りたいみたい・・・どうするのかな)

(でもなあ・・・翔太先輩は指揮棒振れないの)


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