第33話事件発生 瞳は指揮者デビュー

トランペットパートの、伊藤華奈(3年生)です。

今日、事件が起きました。

同じ3年生の翔太君(トランペット、最近は指揮者)が、体育の授業(サッカー)

で、足を蹴られて転んで病院送り。

足の骨にヒビが入ったとのことで、ギブスガチガチで戻って来ました。

(でも、かなり不自由な感じ)

(とても、指揮棒は振れないようです)


「練習困ったね」

「他に振れる人は?」

「みんな楽器持ってパート譜の前」

・・・・


そんなザワザワとする中、当の翔太君が、瞳君を手招きしました。

「瞳君は、フィガロのトランペットパートは既に完璧」

「それとモーツアルトのピアノ協奏曲はトランペット吹かないよね」


瞳君は、少し引き気味です。(気配を察したようです)

「あ・・・そうですね」


翔太君は、ニコニコと瞳君に指揮棒を渡します。

「指揮者の楽譜も読めるよね」

「音楽歴も長いから」


瞳君の顏が真っ赤です。

「僕は、新入生で・・・新入部員で」

「他の先輩は?」


翔太君は、首を横に振りました。

「そういうのは、前の先生時代のこと」

「もう、終わった」

「ほら、みんな待っている、フィガロを振って」

「ピアノコンチェルトは指揮兼ピアノで、バレンボイムがやるように」


少々うろたえた瞳君でしたが、音楽部の面々から、足踏みと拍手です。

(つまり、サッサと指揮台にのぼれ、ってこと)


瞳君が、指揮台にのぼりました。(逃げられなかった)

胸を張りました。(健気だ・・・可愛いけれど)

「翔太先輩の時と同じように」(それ・・・言わなくていい)


指揮棒の構え方は、ピシっとした感じ。(教科書通り風)

そのまま、鋭く降りおろしました。(フィガロの結婚なので)


・・・で・・・そのまま、速いテンポです。

(指揮棒も、キレキレ)

(とにかくリズム感がいい、弾ける感じのフィガロです)

(マジにロックそみたい)


それでいて、ダイナミックスもしっかり、つけます。

抑えるところ、盛り上げるところが明確です。

(後ろで見ている翔太君も、目を丸くしたり、ニコニコしたりです)


途中から、余裕が出来たのか、各パートに目や手で指示を出して来ました。

(大きくとか、抑えてです)

(要求や指示がハッキリしているので、みんなノリノリです)

(石川先生の時は、こんなことはなく、適当で、イヤイヤでしたが)


クライマックスも、思い切り弾けて終わりました。

(翔太君は、大ニコニコで大拍手)


音楽部員は、ノリノリの演奏で気持ちがよかったので、瞳君に拍手しています。


ただ、瞳君は、ゼイゼイしながらコメントです。


「こんな感じで、いいのかな」

「僕的には、もっと、跳ねた感じにしたい」

「パーカッションと低音パートは、もう少し強く、鋭めに」

「音楽が、クッキリして来るかなと」


音楽部員たちの反応も速いです。

「瞳君、リベンジしたい!」

「もう一度振って!」


・・・瞳君は、まだゼイゼイしています(笑)

(お米食べないから、カロリー不足になるの)

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