第26話私、沢村美由紀は、神様をうらみます。

沢村美由紀です。

毎日、瞳君と里香先輩の「ラブラブ感」を、指をくわえて見ているだけです(涙)。


「もう、すでに公認カップルだよね」

「最初は姉と弟感もあったけどさ、今はもう、いい感じ」

「目と目で気持ちが通じ合うのかな、二重奏でも完璧」


・・・みんな、私の気持ちなど知らず、ほざいています。


ラブラブ話は辛いので、瞳君の音楽の話にします。

まず、トランペットは絶好調です。

気持ちがいいくらいに、鳴ります。

この前は、屋上で「アイーダ」を吹いていました。


その間、他の部員の音が止まりました。

(瞳君のアイーダを聴きたいから)

(実際、キンキラキンに鳴っていました)


ピアノは、全く心配なしです。

(トランペットとは、比較になりません)

瞳君のテクニックは完璧ですので、後は本物のソリストを呼ぶか、あるいは瞳君が「弾いちゃう」のか、それは榊原先生の判断とのこと。


※瞳君本人は、トランペットを吹きたいみたい。

(里香先輩の隣にいたいから、とはっきり言っていますし)


モーツァルトの練習になって驚くのは、運動部(グラウンド)の人たちの反応です。

とにかく瞳君のソロ部分で、全員の動きが止まります。

理由も、クラスの子から聞きました。

「だって・・・いい感じで」

「聴いていたいしね」

「みんな、瞳君のファンだよ」(それは、そうならなくてもいい、私は困る)


それから、区民オーケストラにも積極的に行っています。

夏のコンサートで出演する曲は、「スターウォーズ」

ホルストの「惑星」から「木星」

エルガーの「威風堂々」

ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」など。

(我が学園のメンバーは、分散して、参加です)


尚、瞳君は、「スターウォーズ」と「威風堂々」

(里香先輩と私も一緒になっています)


で・・・スターウォーズで、瞳君は、指揮者から指摘されています。

「もっと派手に吹いていいよ」

「高校生なんだから、キンキラキンに吹いて」

(瞳君は、キンキラキンのタイプでない・・・)


でも、必死に吹いて、最後は及第点もらいました。

「まあまあ・・・いけるかな」

「さすが、美佳先生の子供だね」(やはり、そう知った上での指摘)

「でも、美佳先生のほうが響いた」

(がんばれ!母に勝て!・・・でも、美佳先生はトッププロだ・・・)


区民オケ練習後は、全員でファミレスです。

トランペットパートは、固まっています。

(私はクラリネットなので、隣のボックス)


瞳君「ごめん、へばりました」

翔太先輩「充分鳴っていたけどね、あれは指揮者の言い過ぎ」

敏生先輩「俺なら無理、あそこまで出ない」

華奈先輩「Bachは重いよ、日本製の方が鳴りやすいかも」

里香先輩「胸の張り方かも」

瞳君「マウスピースかな、それも鬼母に聞きます」

翔太先輩「俺は、今のままでいいと思うよ、ベルアップしたら?」

敏生先輩「確かに、その手もある、下を向いて吹いているよ」

華奈先輩「言われっぱなしは悔しいからね」

里香先輩「うん、うるさいって言われるくらいに、響かせようよ」


・・・・・


すごく悔しいのは、私がクラリネットなので、トランペットパートの話に参加できないこと。

(座る余地もないし)


・・・ますます、瞳君と距離が開く感じで辛い。(もう、神様をうらみます)

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