第22話音大ではピアノ科に でも部活ではトランペット

僕(本田瞳)は、沢村美由紀については、まだまだ、一定の距離を置きたいのが本音です。

(もちろん、新しい音楽部の仲間として、イザコザは起こしません)


僕は、里香先輩が好きです。(他の女子は目に入らないくらい)

やさしくて、おっとりとして、甘い雰囲気。

僕のことを、本気になってケアしてくれる。


石川先生と元コンマスの佐々木さんから叱られて、音楽部を退部させられた時、最初に反発の声をあげたのは、里香先輩。(後で聞いた話です)

「もう、我慢できません」と立ち上がって、石川先生に最初に退部届を出して、それにトランペットパートが続いて、後はナダレを打ったように、他の音楽部の面々も続いたとか。

そして、失意の僕を追いかけてくれて・・・いろいろで・・・とにかくうれしい。


さて、銀座から家に帰ると、ピアノの先生(浜野佳子さん:母の従妹)が、リビングで母と話をしています、

挨拶だけして(レッスンの日ではないので)、部屋に戻ろうとしたら、呼び止められました。

「ねえ、瞳君、コンサートに来て」

「チケット持って来た」


僕は断る立場ではないので、そのままリビングに残りました。

「ショパンプログラムですか」

「楽しみです」

浜野先生

「ペアチケットでいい?それとも、もっと欲しい?」

僕は、里香先輩と行きたいので「2枚」と答えると、母が首を傾げました。

「揉めない?それ困るよ」(浜野先生に、コソコソ言っているし)


結局、10枚渡されて、浜野先生は、ニヤニヤです。

「瞳君も、モテるようになったの?」


だから、しっかり言いました。

「好きな人はいますよ、一人だけ」

(本音、里香先輩しかいないから)


母は苦笑です。

「それで、トランペット再開だから」

「あれほど言っても吹かなかったのに」


浜野先生

「お姉さんが好きなタイプ?」


答えないでいると、母が・・・

「確かに、あの娘さんは、私も好き」

「少しおっとりして、上品でやさしい」

「瞳は弱気な子だから、あの娘さんがベスト」


少し間をおいて

「でも、朝。突然来た娘さんは(美由紀か・・・)、ちょっとキツイ感じ」

「幼なじみもあったのかな」(なじんではいないよ)


浜野先生は、ニコニコしながら、話題を変えました。

「ねえ、瞳君は、音大どうするの?」

「よかったらピアノ科で推薦するよ」(浜野先生・・・音大教授だった)

「ペット科で間に合う?」(考えていなかった)

「ずっとサボっていたんでしょ?」(事実だから、抗弁できない)


母は、僕の顏を見ました。

「まあ、ピアノがいいと思うよ」

「音楽の先生タイプだね」

「プロでステージ中心の、ギラギラ世界には、向かない」


浜野先生は、首を横に振りました。

「でも、高校生で急に変わることもあるよ」

「今は、落ち着いた演奏で、体力がつけばベートーベンも出来る」

「テクニックは、この年齢のトップクラスだよ」


僕は、悩むのが面倒だった。

「ピアノ科を目指します」

「トランペットは、趣味にしたい」

「練習に、手は抜かないけれど」


浜野先生は、満足そうな顔。

ただ、母は、少し寂しそうな顔。(ペット科を期待していたのかもしれない)

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