第21話楽器選びは、いろいろでした。
私、沢村美由紀としては、超ガッカリと、ほのぼの安心が同居したような、何か不思議な感じです。
超ガッカリは、やはり「瞳君とのひとり占めデート」が壊されたこと。
(やはり、里香先輩が感づいたのかな、手ごわいなあと)
(・・・美佳先生は責められない)
(美佳先生としては、素直に言ったと思うから)
(美佳先生は、敵に回せないよ、瞳君のお母様だし)
ほのぼの安心は、美紀先輩のこと。
やはり、いきなり新品の楽器を持って行けば、音楽室で騒がれる。
そして下手に吹けば、「え?」の表情を、クラリネットパートや木管パートに、されてしまう。
それよりは、美佳先輩にも、新品を買うのを見てもらえれば、「安心かな」と。
(瞳君も、音には敏感だけど、やはりピアノとトランペットの人だから、木管特有の微妙な点はわからないから)
楽器店に入りました。
美佳先生が連絡してくれてあったので、木管の責任者が、新品も何本か見せてくれます。
試奏室(防音室)で、いろいろ吹かせてもらいました。
最初から吹きやすい楽器。
吹き込んでいくと、すごく良くなりそうな楽器。
いろいろあって、悩みました。(値段は、あまり変わらないので)
指に、しっくり馴染むか、それも大事。
美紀先輩がアドバイスをくれました。
「これから、身体も胸も大きくなる」
「だから、少し重めにしたら?」
でも、心配です。
「胸が小さいままかも」(Bカップですが)(瞳君には聞こえないようにした)
美紀先輩は、私の音をじっと聞いて(・・・頼りになるなあ・・・)、「これか、これ」と、またアドバイスです。
・・・で・・・悩みに悩んで、重めにしました。
(しっかりブレスをすれば、深い音も、明るい音も出ます)
代金は、「大負け」にしてもらいました。(本田美佳さんの紹介と・・・感謝です)
楽器を買い終わると、瞳君はトランペット売り場に行きました。
(「今持っているBachと同じ型番があるから、吹いてみたい」と言うから)
里香先輩が、瞳君の気持ちを代弁します。
「今、瞳君が吹いているのは、長年美佳先生が吹いた楽器」
「新品と、どう違うかだよね」
さて、防音室で、瞳君の試奏を聞きました。
でも・・・音が変です。
瞳君、マジに苦しそう。
これも里香先輩が解説です。
「同じ型番でも、瞳君が使っているのは、お母様の美佳先生が長年鳴らしに鳴らした楽器」
「音の抜けが、違うの」
「鳴りやすくなる」
「つまり、楽器も鍛えられて成長するの」
「もちろん、パワーがある人は最初から鳴る」
「でも、瞳君は、まだ細いし、パワーはない」
「だから、今の楽器が正解かな」
瞳君も「見解」を述べます。
「鳴らなくて悔しい」
「自分なりに、新品を育てたい気もある」
「でも、時間かかるかな」
「それ以上に、母さんの楽器が吹きやすい」
楽器店の人は、ニコニコしています。
「私が、美佳さんの楽器を売りました」
「それを瞳君が使うのがうれしいです」
「埋もれさせたくないのが本音かな」
さて、その後、全員で、ピアノ売り場に行きました。
もちろん、瞳君のピアノも聴きたいから。(ペットより、今は上手です)
瞳君も抵抗しません。
いろんな曲を弾いてくれました。(バッハ、モーツアルト、リストも)
でも、ベートーベンは苦手みたいで、弾いてくれなかった。
性格的なものかもしれない。
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