風邪

 緊張した面持ちのフィーが連れてこられたのはユーリの私室……ではなくて魔道具の研究部屋だった。



「あ、あの、ユーリ様? ここでするの?」

「もちろんだろ? 何をおかしなことを言ってるんだ?」

「ふぃ、フィーがおかしいの?」

「なんだ? 今日はいつにも増しておかしいぞ。熱でもあるのか?」



 俺は額をフィーに当てる。

 するとフィーの顔は真っ赤に染まり、必死に手足をバタつかせる。



「んーっ、ちょっと熱いか? あんまり無理をするなよ。今日は別に一人でもいいからな」

「ひ、一人!? そ、それなら誰か呼んでくるの!!」

「いや、そんなことをさせてフィーが倒れてしまうことの方が心配だ」

「うぅぅ……、わかったの。今日は大人しく休んでるの」

「部屋まで連れて行こうか?」



 フィーに尋ねると彼女は再び顔を赤くして必死に断ってくる。



「だ、大丈夫なの。そ、そのくらい自分でできるの」

「そうか? それなら気をつけて戻るんだぞ」

「うん、わかったの……」



 フィーが呆けた様子で部屋から出ていき、一人となる。

 そこで俺はようやく笑みをこぼしていた。



「これで邪魔されることなく研究に没頭できるぞ」



 その他のことで時間がとられ、ここ最近全く何もできなかった。

 せっかく時間がとれるのだから邪魔されること無く研究をしたかった。



「次は何を作るかな? そろそろ通信機器に取りかかるか? それとも照明器具を発展させるか? コンロを作るのもいいな。それとも娯楽用品へいくか?」



 手を動かしながら想像を膨らませる。



「あの……、ユーリ様?」

「うーん、国作りで資金不足になる可能性があるならまずは娯楽用品か。無難なところで簡単にできるものをいくつか……。魔道具じゃない分、値段は安くでできそうだな。適当にフリッツにでも任せるか」

「ユーリ様、ちょっとよろしいでしょうか!?」



 耳元で突然大声を上げられて思わずビクッと肩を振るわせる。



「な、なにかあったのか!?」

「いえ、ユーリ様にお客様です」

「今は忙しい」

「ですが、ユーリ様がお連れしたお客様でしたので……」

「俺が連れて来た……?」



 ここ最近俺が連れて来た客といえばインラーク国王だけで、彼は今この街を見て回っているはず。何か問題でもあったのか?


 別人なら問題ないが、もし国王本人ならば大きな問題になりかねない。

 せっかくゆっくり研究ができると思ったのだけどな……。



「わかった。すぐに行く。応接間に通して菓子でも出してくれ」

「かしこまりました」



 広げていた研究材料を片付けると俺はため息ながら応接間へと向かうのだった。




―――――――――――――――――――――――――――――

【更新日変更のお知らせ】

来年1月1日より当作品の更新日を『金曜日』から『水曜日』に変更させていただきます。

また、年越しのカウントダウンも兼ねて12月29日、30日、31日にも更新を行う予定となっております。

どこかで見た更新日程なのは内緒にしておいてください。



【作者からのお願い】

 これからも頑張って続けていきますので、よろしければ

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