肝心なこと

「ユーリ様、ところで一番肝心なことを忘れているの」

「肝心? 何か見落としていたか?」



 確かに今はインラーク国王がこの国を見て回っている。

 何か問題があればすぐさま国家間の紛争にまで発展しかねない。


 そうなると待ち受けているのはやはり破滅。


 今はどんな些細なことも見逃さないように注意しないといけなかった。



「もちろんなの! とんでもなく大切なことなの!!」



 フィーがグッと前のめりに言ってくる。

 ここまでしてくることは俺がちょっと魔法を使いすぎたとき以来だ。


 ……そういえばここ最近バタバタしててあまり魔道具作りをしていないな。


 ひょっとしたらフィーはそのことを言っているのかも知れない。


 確かに前までは隙あれば魔道具を作っていたのだからその異変はかなりのものに感じるだろう。



「なるほどな。わかった。それなら俺はしばらく部屋に篭もるぞ」

「ふぇっ!? こ、こんな時間からなの!?」

「んっ? 時間なんて関係あるのか?」

「た、確かに関係ないの……。そ、それじゃあ、誰を呼んでくるの? エルゥ様? ルナ様? それともティア様?」



 どうしてここで彼女たちの名前が挙がるんだ?

 いや、フィーのことだからお目付役でも付けようとしているのか?


 普段の行いは信じて貰えているけど、相変わらず魔道具作りに関しては信用がないな。

 そんなぶっ倒れるまでやるわけないのにな。

 かなり魔力増えたし、別に数日くらい徹夜した程度じゃ倒れないのに。


 ただ、俺がちょっと魔道具を作るだけにわざわざ彼女たちを呼ぶのも忍びない。

 そもそもいつもならフィーが見張っていたはずだし、どうせ他の人を呼んだところでフィーも隠れて見張っているなら一緒のことだろう。

 もしかすると何か用事でもあるのだろうか?



「フィーじゃダメなのか?」

「ふぇっ!? ふ、フィーなの!?!?」



 フィーは顔を真っ赤にして慌てふためく。

 しばらくして俯き加減のまま頷いていた。



「わ、わかったの。ユーリ様がいうなら……」

「そんな覚悟を決めることか?」

「ユーリ様はわかってないの。すごく大事なことなの!」



 フィーの態度を不思議に思い俺は首を傾げる。



「とりあえず部屋へ行くか」

「ちょ、ちょっと待って欲しいの。その、体を洗ってから……」

「どうせ汚れる……、いや、今日は大丈夫だけど、運が悪くて汚れる可能性もあるから後の方が良くないか?」



 どうしても実験に失敗はつきものだ。

 稀に魔道具が爆発して周囲に素材が飛び散るなんてことも起こる。


 せっかく綺麗にしても爆発してからじゃ意味がなさそうだ。

 とはいえ、細かい作業をする場所だ。

 清潔にしておきたいというフィーの気持ちもよくわかる。



「せ、せめて服だけでも……」

「あぁ、そうだな」



 実験室の服と言えばこれだもんな。

 俺は予備の服をフィーに掛けてやる。


 白色のローブを……。

 もちろん白衣代わりだ。



「これでよし。さぁ行くぞ」

「ぜ、全然良くないのー!!」





―――――――――――――――――――――――――――――

【更新日変更のお知らせ】

来年1月1日より当作品の更新日を『金曜日』から『水曜日』に変更させていただきます。

また、年越しのカウントダウンも兼ねて12月29日、30日、31日にも更新を行う予定となっております。

どこかで見た更新日程なのは内緒にしておいてください。



【作者からのお願い】

 これからも頑張って続けていきますので、よろしければ

「応援したい!」「続きが気になる!」

 など、思っていただけましたら、下にある『☆で称える』のところにある『+』ボタンを押して応援していただけると嬉しいです。


 目に見える数字というは本当に励みになりますので、ぜひともよろしくお願いします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る