独立に向けて

 貴族として独立をしようとしたら国として独立することになってしまった。

 もはや何を言っているのかわからないが、引き受けてしまった以上やるしかない。


 ただの破滅フラグが特大の破滅フラグに変わってしまった気もするが、連座による処刑がなくなったことだけマシとも言える。


 とはいえ問題は山積みだった。


 そもそもずいぶんこの領地が発展しているとはいえ、それはあくまでも一領地として。

 国として考えるなら足りないものはいくらでもある。



 一応フリッツには国軍に使う魔道具を取りに賢者の塔へと行ってもらっている。


 この領地の特産ともいえる魔道具はフルに有効活用しないといけない。



「と、とにかく今は国としての独立したこととその国の王となったこと……あれっ?」



 そういえば俺が王ってことで良いんだよな?

 インラーク国王からは「国としての独立は認める」と言われたものの俺が王であると言うことは一切言われていない。


 つまりは別の誰かに押しつける方法も……。



「フィー!」

「もちろん王様はユーリ様なの」

「まだ何も言ってないぞ?」

「言わなくてもわかるの」



 くっ……。

 国王なんて何かあったときに全責任を取らされるだけの外れ役職じゃないか。

 偉そうな椅子に座って勇者を送り出すだけの仕事……。


 いや、それは偏見すぎるな。

 実際には山のように積まれた書類を解決していく必要がある。


 色々と国の方針を定めたり、他国との交渉をしたり……。


 やることが多すぎてまともに暇な時間がなくなってしまうのではないだろうか?



「逃げるか」

「もちろんダメなの」

「くっ。俺はただ平和的に暮らしたいだけなんだ」

「それならこの国をそういう場所に変えると良いの。ユーリ様ならできるの」



 それもそうか……。

 なにも従来のカタに囚われる必要はないんだ。

 俺独自の国を作ってしまえば良いんだ。



「よし、それなら……」

「まずはお仕事なの」



 フィーにがっちりと掴まれる。

 まるで先を読まれているかのように。



「いや、俺は……」

「ユーリ様、また逃げようとしていたの。仕事がたくさん溜まっているの。サーシャ様ばかりにやらせたらダメなの」

「ほらっ、そこはやれるやつに任せた方が仕事が捗るわけで……」

「ずっと国を開けていたのだから居るときくらいはお手伝いするの。ほらっ、行くの」

「わ、わかったよ……」



 仕方なく俺はサーシャの所に向かうのだった。



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