国王の視察(2)

――羊……だよな? なんでこんなにデカい? それに今、喋らなかったか? いや、そういう種族もいるのか? そもそもどうして羊が肉を食ってるんだ? いや、畑で生えているから肉に見えるなにか、なのか?



 色々と考えてみるものの答えがでない。

 ただ、少年が普通にここに他所の人間を案内したということは、隠すものでもないと言うことなのだろう。


 確かに肉が欲しいのなら家畜を育てたらいい。

 わざわざ畑に生やす意味は皆無だ。


 それに羊がいくらデカくて肉を食おうが、所詮は羊。

 家畜以上でもないだろう。


 それにいくら順調に育っているとはいえ、それほど広い規模の畑でも無い。

 確かにこの規模の畑からしたらかなり作物はとれていそうである。


 しかし、広大な土地を持つインラーク王国と収穫量を比べるとその差は一目瞭然であろう。


 つまりこの畑は他国が目を付けた要素では無い、ということだ。



「ありがとう。助かったよ」

「おう、すごかっただろ? これ、お土産にやるよ」



 少年が採れたての肉をくれる。

 それを受け取った瞬間に羊が肉を食べてしまう。



「うまいめぇ。おかわりがほしいめぇ」

「お前にやったんじゃない!」



 少年がガシガシと羊を蹴っていた。

 それから何度か肉を渡してくれようとしたが、その都度羊に食べられてしまったので丁重にお断りをして、次の場所を見に行くことにしたのだった。




         ◇ ◇ ◇




 国王が次にやってきたのはユーリを支える魔道具が作られている場所。

 賢者を抱えている塔だった。

 のだが……。



「なんだ、この塔は? これも魔道具でできているのか?」



 なぜかその塔は斜めに傾いていた。

 いや、それどころか揺れている。



「侵入者を排除するため? いや、確かにここに入るのは勇気がいるが、中で暮らせるような所なのか?」



 そもそもこんなに揺れてて不安定な場所で魔道具を作れることなんてできるのだろうか?



「そう思わせるのが策か?」



 確かに普通に考えるとこんな場所で何かを作れるとは考えにくい。

 実際には他所で作っている。と考えさせることでここに人を来させないことかもしれない。



「つまりここに魔道具作成の秘密が……」



 意気揚々と国王は塔の中へと入っていく。

 そして、数分後……。



「はぁ、はぁ……。ば、馬鹿か!? なんで研究所の中に魔物がいるのだ!? まるでダンジョンでは無いか!?」



 命からがら逃げてきた国王は息を切らせていた。



「い、いや、そこまでしても隠したいものがある、ということなのか?」



 つまりこの領内のものたちはあの魔物を退ける何かがある、ということだろう。



「おっ、おっさんは誰だ? この塔になにかようか?」



 膝をつき呼吸を整えているとなぜか大きな金槌を持った傭兵風の男がやってくる。



――どこかで見覚えのある男だな?



 しかし、毎日たくさんの人を見ている国王が一度二度見たことがある程度の男を覚えているはずも無かった。



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