国王の視察(1)
インラーク国王は部屋へと案内された後、隠れるようにこっそり窓から飛び出していた。
ティアを側室に入れるのだ。
すぐに争うことは無いとわかっている。
とはいえ、それもいつまで持つのかわからない。
いずれ敵対する可能性があるのならその相手のことを調べておくのはおかしいことでは無い。
国王の仕事かと問われると否であるが、そもそも回りの誰も信用できない孤高の王である。
自分の目で見たこと以上に信じれるものはなかった。
そのはずだが……。
「な、なんだ、ここは……」
まずは農業から、と畑の様子を見に来たはずだった。
碌に作物が育たない枯れ細った地だったはずの畑にはたくさんの作物が植わっている。
みごとに枯れた地を復活せしめたのだろう、と理解はする。
ただ、人というものは見たくないものに視線を向けようとしない。
まさか畑から肉が生えてくるなんて夢でなかったら一体何なのだろうか?
「……まさかユーリは悪魔とでも契約したのか?」
いや、悪魔にもこれほどの力があるとは考えにくい。
むしろ悪魔であってくれ、と願いたいほどでもある。
人の理を歪ませるユーリを神の如く崇拝する人たちが出てくるのも納得である。
「おう、おっちゃん。こんな所で何をしてるんだ?」
畑を見ていると無邪気な少年が話しかけてくる。
どうやらここの農作業を担当している子のようだ。
彼からなら詳しい事情を聞けるかもしれない。
「ここの畑に興味深いものがあったから見ていたんだよ。あれについてキミは何か知ってるかい?」
国王は肉を指差しながら訪ねると少年は嬉しそうに答える。
「えへへっ、すごいだろ? あそこまでしっかりと育てるのに苦労したんだ」
どうやらこの少年があの肉を育てた張本人らしい。
普通だとあり得ない、まさに農業の錬金術とでもいうべきことだろう。
こんな人材が隠れていたなんて。
いや、そもそも貴族じゃ無い人材を探すようなことを王国でしてただろうか?
せいぜい賢者や聖女、勇者と言った神に選ばれた人材くらいであとはそれほど興味を持たなかった。
優れた人材は優れた親から生まれてくる、というのが常習化している。
平民からこんなにも優れた人材が出てくると考える者はいなかったのだ。
……いや、落ち着け。優れた、というよりもぶっ飛んだ発想の持ち主、だな。
確かにこんな不毛の地でしっかり畑を育て上げる手腕は素晴らしいものがある。
それと同時になぜ肉を畑から生やしているのか、という疑問もある。
狂気の沙汰とも思えない。
やはり悪魔の所業と言わざるを得ないんじゃ無いだろうか?
それと同時に肉すらも畑でとれるとなると兵糧に関してはすぐに問題がなくなるだろう。
ぶっ飛んでいるように見えてその実、十分に考えられているようだ。
それに……。
「今日もお肉がうまいめぇ」
しっかりと家畜も育てているようだ。
とんでもない大きさの羊が嬉しそうに畑の肉を食べている姿を見て国王は脅威に思えるのだった。
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