手紙の裏
やはり独立を許可するという文面である。
このようなものを国王自ら渡してくるなんて一体何を考えているのだろうか?
俺は黙って国王の目をジッと見る。
瞳の奥は笑っておらずやはり手紙の文面通りに捉えるのは良くない気がしていた。
「確認させていただきました。この独立国として認める、というのはどういうことにございましょうか? 私としては辺境を治める領主の代行としてやってきたまでにございますが?」
俺からの質問に国王は少しだけ目を見開いていた。
もちろんそれはほんの一瞬の変化で瞬きでもしている間に元の表情へと戻っている。
この辺りはさすが国王と言ったところだろう。
「ご冗談を。複数国との婚姻による同盟、王都並みに発展させる手腕、流行を生み出す技術力、他国にも勝るとも劣らない戦力、どれをとっても一領地が持つに留まらないものにございます」
俺としては貧しすぎるこの領地を何とかしようと頑張ってきただけなんだけど……。
国王の言葉で改めて俺は自身の領地の状況を再確認することができた。
つまり国王としては自身のお膝元である王都すら脅かすほどの力を持った俺を切り離したいのだ。
俺の方が力が上回っていれば自身の地位が危ういと考えているのかもしれない。
かといってそのまま他国へ行かせるのも恐ろしい。
なにぶん一国と同等の力を有している領地だ。
仮想敵国の力を倍増してしまう恐れがあるのだ。
自分の国では抱えていられない。
かといって他国に出すにも惜しい。
それらをまとめると独立国として認めて、繋がりだけはしっかりと残しておく、というのが一番安パイなのだろう。
ただ国の庇護下から吐き捨てられる俺からしたらとんでもないことだった。
確かに言っていることは理解できるのだが、所詮は辺境にある小さな領地だ。
連座による破滅は免れられるだろうけど、簡単に攻め込まれて滅ぼされるだけの未来が見えるのだが?
なにせここは王国、魔王国、帝国、公国、獣王国の五カ国に挟まれた地……。
――いや、待てよ?
冷静に考えると獣王国の王女、エルゥとは婚約しているし、帝国も同様だ。
公国はいつでも国を譲るなんてとんでもないことを言い出している上に王国も婚約したいと言っている。
更に魔王国は魔王ルシルがもはやこの領地の住人のように堂々と闊歩している。
つまりはすぐに襲ってくるような周辺国はない。
それより遠くの国もいくつかあるがわざわざ大国を越えてここへやってくることは無いだろう。
破滅回避のためにここは受けておくべきだろうか?
それとも……。
少し迷った結果、俺は国王に承諾の旨を伝えるのだった。
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