国王の動き
ティアから届いた手紙を見て国王は唸っていた。
「これはどういうことだ? ユーリは独立を望んでいたのではないのか!?」
「はっ、それは何度も口にしているようで間違いないかと」
「では、なぜ断ってくる!! 同じような手紙がユーリからも届いていると聞くぞ!」
「それは簡単なことにございます」
兵はゆっくりとした口調で言う。
「ユーリ様もまだこの国の民、ということです」
「それがどうした!?」
「つまり先ほどの命による真偽を図りかねているのでしょう」
「……なるほど。いきなり承諾して謀反あり、と思われたくないと言うことか」
「そういうことにございます」
「……謀反されて困るのはこちら側なのだがな」
すでにユーリの街にいる戦力は王国のそれをはるかに凌駕する。
更に三カ国の……、いや、内々の調べでは四カ国の協力を得ることすらできると聞く。
我が国単独で世界を相手にするに等しいことだ。
そんなことできるはずもない。
「一度でダメなら二度、三度……。何度でも構わん。認めるまで使者を送り続けるのだ! 彼の地はもう我が国の手には負えん。それは他のどの国も同じだろう。それならばさっさと独立させてしまえ。よいな!」
「はっ!!」
兵が慌てて出ていくのを見送った後、国王は疲れからため息を吐く。
今までこんな大きなトラブルが起こることは一度としてなかった。
それが今年はどうだ?
まるで津波のごとく押し寄せてきている。
もう少し手加減をしてほしい、と思うことは間違ったことだろうか?
とはいえ、動いてしまった以上は手を拱いていては待ち受けるのは国としての崩壊。
それは国王として見逃せない。
彼の地に対してはこちらからも最大限の譲歩をしている。
ティアを妾として送ったこともそうだ。
可能な限りユーリが望むように動いている……はずだ。
しかし、我はそもそもユーリについて詳しいところまではわからない。
ルーサウス家の一員ということで、おそらくはバランよりかなりの訓練を受けているのだろうが……。
「一人で悩んでいても仕方ないな。ユーリのことは親であるバランが一番詳しいであろう。彼から色々と話を聞いてこれからの対処を考えるとするか。そもそも彼の地にユーリを送り出したのはあのバランであろうから……。待てよ」
国王はふと嫌な予感が脳裏をよぎる。
結果的にユーリが力を発揮して独立するにまで至った、というのが表向きの流れだが、それをもしバランが描いていた結果だというのなら……。
国力を削る一環と見て取ることもできる。
それこそルーサウス家そのものが無叛しているとも考えられるのでは無いだろうか?
「ダメだな。やはり我自らが彼の地について。ユーリについて調べるしか無かろう。それしか信頼できぬな」
とはいえ国王たる身ではそう簡単に出歩くことはできない。
だからこそ国王はとある者を頼ることにするのだった。
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【作者からのご報告】
皆さんの応援のおかげで『黒幕一家に転生したけど原作無視して独立する』が書籍化、コミカライズ化することが決まりました。
本当にありがとうございます。
レーベルや詳細については追ってご報告させていただきますので、のんびりお待ちいただけるとありがたいです。
また他作品についてもご報告がありますので、気になる方は近況ノートの方をご確認いただけますと幸いです。
引き続きどうぞよろしくお願いします。
【作者からのお願い】
これからも頑張って続けていきますので、よろしければ
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