ティアの手紙

 辺境の地に送られたティア。

 一体どんな生活が待ち受けているのだろう、と不安にかき立てられていたのだが実際に行ってみるとそこにあったのは王都にも匹敵するほどの栄えた街であった。


 たしかにこれなら国として独立を認める気持ちもよくわかる。


 ここ、アルフの地は様々な国に囲まれた土地である。

 獣王国、帝国、魔族国、聖公国、王国……。


 かといって、戦争をして奪いあうにはあまりにも不毛の土地でそれだけする価値はなかった。

 なかったはずなのに……。



「これがユーリ様のお力……」



 すでに争いになりそうな帝国、獣王国、聖公国から国としての援助を確約されている。

 もしここでユーリの独立を認めていなかったら、王国はその三カ国から攻められていたかもしれない、と考えるとユーリがいないとダメになりそうな土地はさっさと切ってしまう。


 それが一番簡単な問題解決方法であった。


 確かに国としての領土は減ってしまう。

 ただ、資源もまともにない不毛の地なのだから、そこにそれほどの価値はなかった。


 ユーリ一代の間だけ交流を結べればそれでいい。

 そう考えるとそれほど発言権もなく、目立っていない自分との婚約は対外的にも交流があることを示せ、更に第三国とも協調していくといういいアピールになる。


 ただ、国王達も見落としていたことがある。


 すでにこの領地はユーリがいなくても十二分に成り立っている。

 さすがに聖公国が望んでいるような新規魔道具についてはまだまだユーリの力が必要にはなるのだが、他のものに関しては既に大賢者メルティが作る事に成功していた。


 どうやらあの斜めの塔はただ斜めになっているだけでは無かったらしい。

 ただユーリが言うには“あれは本人の趣味だ”ということだったので真相まではわからない。


 更に不毛の地であるにも拘わらず、なぜか作物が大量に育っていた。



「えっと、これはさすがに想像以上かも……」



 ユーリに手紙を渡したことを伝えるついでに街の様子を描こうとしていたティアだったが、あまりにも予想以上の場所だったために描くことが多過ぎて困惑していた。



「と、とりあえずすごい場所ってことを書いておけば良い……ですよね」



 困惑しつつ手紙を書いていく。



「あとは……。独立についてユーリ様が仰っていましたね」



 きっと謙遜されているのでしょうね。

 不毛の地でもこれほどすごく変えてしまうお方ですもの。

 きっとどこでも同じ成果を発揮されますよね。



 ティアは笑いながら一応最後にユーリが独立について悩んでいる話を入れるのだった。



―――――――――――――――――――――――――――――

【作者からのご報告】

皆さんの応援のおかげで『黒幕一家に転生したけど原作無視して独立する』が書籍化、コミカライズ化することが決まりました。

本当にありがとうございます。


レーベルや詳細については追ってご報告させていただきますので、のんびりお待ちいただけるとありがたいです。


また他作品についてもご報告がありますので、気になる方は近況ノートの方をご確認いただけますと幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いします。



【作者からのお願い】

 これからも頑張って続けていきますので、よろしければ

「応援したい!」「続きが気になる!」

 など、思っていただけましたら、下にある『☆で称える』のところにある『+』ボタンを押して応援していただけると嬉しいです。


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