切り札
『実はフィーの料理、あいつは好きなんだ。おそらく食わせることができたら隙を作ることができる。協力してくれないか?』
ユーリからそのようにお願いされたフィーは何も疑うことなく以前作った
ちょっと考えたらいくら好きでも戦闘中に食事を取る事なんて早々ないとわかるはずなのだが。
そして、ユーリの指示通りに気配を隠して潜んでいた。
すると本当に指示された場所に
フィーが隠れていることには気づいた様子はない。
だからフィーはそのまま
ただ、その様子がおかしい。
一瞬驚いた表情をみせたがすぐに不敵な笑みを浮かべていた。
「毒か。しかしこの俺には状態異常の類いは効かな……。がはっ」
すぐさま
拘束されているために膝をつくことすらままならず、口に入ったものを吐き出したいにも関わらず、ユーリの土魔法で口から出すことすら許されず、結果的に飲み込むしかなかった。
◇ ◆ ◇
ラムですら一撃で屠った最強の切り札を持ってしても
これでもまともに戦えるのならば俺たちには為す術がないということになる。
「いったい何をした……」
なんとか拘束を振りほどいた
ただかなりのダメージを与えることができたようだ。
「それを俺が教えると思うか? 対
「なるほど……、本当に油断のできないやつだな……」
楽しそうに
「俺の負けだ。ひと思いに殺るといい」
「いや、お前をやる理由が俺にはない。それよりもここを通してくれると言うことで良いんだな?」
「もちろんだ。負けた俺には何も言う権利はない。全てお前に付き従おう」
なんだろう。帝国の人間は負けた相手の仲間にならないといけないルールでもあるのだろうか?
そうなると今まで倒した奴らも……。
二桁とか名乗ってた人間もいた気がするし、知らない間に倒してることも度々ある。
いきなり人を襲うような相手は問題が起こる可能性があるからあまり増えてほしくはない。
でも、これで帝国へ向かうための最大の関門を突破できたことになる。
再び出発しようと思ったのだが、なぜかフィーが動かない。
「フィー、どうかしたのか?」
「……だったの」
「んっ、何か言ったか?」
「フィーの料理が好き、というのは嘘だったの……」
「あっ……」
「あ、あれはその、なんだ。ものは方言というかなんというか……」
「わかってるの。フィーの料理はラムですら食べられないものだったの……」
「ご飯? 食べるメェ」
『料理』という言葉に釣られてラムが涎を垂らしながらやってくる。
フィーの料理でダウンしていたことを忘れたのだろうか?
「なんだ、食うのか? まだ余ってたんじゃないか?」
「……あるの」
「わーいメェ。いただくメェ」
フィーが残っていた物体Xを取り出すと、ラムは勢いよく食べ始める。
「少し刺激的だけど、とっても美味しいメェ」
「俺はあんなものを食わされたのか……」
「ラム……、ありがとうなの。これからももっともっと美味しくなるように頑張るの」
「えっ!?」
ラムのおかげでやる気を見せてくれるフィーだが、もしかしてその時に作った料理って俺たちも食わされるのだろうか?
そんな不安に襲われる。
「ユーリ様もラムも白い人もフィーの料理、好きなの」
フィーが断言して言ってくる。
「えっ? 俺もか?」
なぜか巻き込まれた
「
「くっ、これも強くなるための試練か……」
強さは一切関係ない気もするが……。
「そうだ、エミリナやフリッツたちも……」
「すまんな。俺はちょっと刺激の強い料理は苦手なんだ」
「私も教会で食べられるものが決まっておりまして……」
「臭いがキツイのはダメなんです……」
みんなに断られてしまい、結局フィーの料理に付き合うのは俺とファーストとラム、ということになってしまった。
「美味しいメェ。……ばたっ」
物体Xを食べていたはずのラムがそのまま倒れる。
「少し残ってしまったの。ユーリ様も食べるといいの」
後ろに鬼が見える笑みを浮かべながらゆっくりフィーが近づいてくる。
「ま、待て。話し合えばわか……。むぐっ」
口の中に物体Xが放り込まれる。
その瞬間に目が回り、心地よい浮遊感に襲われるのだった――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます