第一位
ラムが完全復活したことで馬車を引き出していた。
「そのユーリ様を狙っている第一位って人は強いの?」
「あぁ、とんでもなく強いな」
剣の腕は原作パーティーの剣士以上。
更に魔法は賢者以上。
しかも時空魔法が使える上に特殊スキルまで使える強敵である。
負けてもイベントが進む故にとんでもなく強い能力にしたのだろうが、そのおかげでやりこみ要素に『
だいたい主人公たちのレベルを上限付近まで上げて運が良ければ倒せるほどに圧倒的な力を持っている。
今の俺たちでは……まず勝てないだろうな。
しかも俺たちは主人公ではない以上、黒幕介入による負けイベント進行は起こらない。
戦って負けるのは仕方ないとしてなんとか追い返す方法は考えないといけない。
一応切り札は用意しているが、それはできれば使用したくない。色々とトラウマを生み出す羊がいそうなので――。
「か、勝てるの?」
「無理だな。できれば会いたくない」
「それはきっと無理。向こうから会いに来ると思う」
ルナがあっさりと言い切る。
「……だろうな。ルナは勝てるか?」
「んっ、無理」
即答をするルナにフィーが不安げな表情を浮かべる。
「そんなところに行って大丈夫なの?」
「さすがに獣王国の使者に無礼を働く真似はしないと思いますよ」
「それを期待したいところだな」
望み薄のまますごい勢いで帝国へと向かっていく。
代換え案は結局なにも思い浮かばずに――。
◇ ◇ ◇
帝国までは多少何人かラムが轢いたり食べたりしたような気はしたが、概ね平和にやってくることができた。
しかし、帝都に入る門へと続く街道で腕を組んで待ち構えている男が一人。
年は二十代くらいだろうか?
長い銀色の髪をしたやや細身であるが筋肉質の体つきをした男である。
自分の身長ほどの剣を持っているところも含めて会いたくなかった人物である。
「
「来たか……」
今まで瞑想をしていたのだろうか?
閉じていた目を開く。
ただ、俺たちは馬車で進んでいる。
気づいたときには目の前に迫っており、ラムは障害物だと思ったのか、そのまま吹き飛ばそうと突っ込んでいく。
「そこ、邪魔だメェ」
「あぁ、邪魔だな」
突っ込んだはずのラムがそのまま弾き飛ばされて俺たちの側へと戻ってくる。
不思議そうにするラム。
「ほう、食材の分際でこの攻撃を耐えるか」
「な、なんか飛ばされたメェ。ちょっと痛いメェ」
よく見るとラムに一筋の線が入っている。
幸い体までは届いてないようだが、今まで敵がいなかったラムですらまるで太刀打ちができないとは。
「フリッツ!!」
「任せろ!」
フリッツはスコップを構える。
「いや、今回は普通に剣を使ってくれ」
「そうだったな」
不安しか残らないが、俺自身も余裕のある相手ではない。
「ルナもサポートを任せる。エミリナは何かあった時の回復を頼むぞ」
「んっ、任せて」
「気をつけてくださいね」
「……フィーは何したら良いの?」
「フィーには特別な任務を任せる。これはフィーにしかできないからな」
そういうとフィーに対して耳打ちをする。
彼女はすぐに頷いていたが「それで何か変わるの?」と不思議そうに言っていた。
「もちろんだ。それが俺たちの最後の切り札だからな」
「わからないけど、わかったの」
その返事を聞くと俺はルナから貰った杖を手に取り、フリッツ同様に
「まさか俺たち全員に対して一人だと不公平とか言わないよな?」
「……当然だ。雑魚が何人増えたところで変わらん」
「雑魚かどうか、やってみると良い」
次の瞬間に
「なるほど。これほどの魔法を操るか。しかし――」
軽く剣を払うと全ての魔法を斬り払ってしまう。
「この程度の威力ではいくらあっても変わらんな」
「一応一発一発が中級魔法程度はあるのだけどな」
相変わらず出鱈目な能力を有している。
実際に対面してみると苦笑いしか浮かばなかった。
すると、一瞬のうちに
「よそ見をしてる場合か!?」
「いや、助かった。これをするには少々時間がかかるからな」
しかもそこから更にルナの支援も入り、強度は増しているのだ。
しかし、それほどしたにも関わらず拘束具は軋みを上げている。
「やはり化け物か……。これで止まってくれたら犠牲者は出なかったんだけどな……」
「笑止。この俺を相手にして犠牲者が出ないなど――」
「いや、犠牲者はお前だぞ?」
そう言った瞬間にどこからともなくフィーが現れて、
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