第四話 帝都での戦い
トラブル
そろそろノーブルバーグを出発しようとしたタイミングで、突然俺の目の前にレンが現れる。
「ユーリ様、ここにいたのか」
「……なにかあったのか?」
「あぁ。サーシャ様からの手紙を預かってきた」
手紙と言うにはやたら分厚い紙束を渡される。
軽く中身を確認してみると大半がエルゥとの仲についてや妾を増やしていないかの心配だった。
それを一旦スルーして本題が乗っている部分を探すと最後に申し訳程度に書かれていた。
『帝国の
概ね予想通りなのだが、サーシャの情報網に引っかかるくらいには大々的に探しているようだ。
「今サーシャに手紙を書くから少し待ってくれるか?」
そういうと紙を取り出して一行、『俺のことなら心配いらない』とだけ書いてレンに渡す。
「雑用を任せてすまんな」
「いや、これが一番早いからな」
「あと、俺がいない間、サーシャを助けてやってくれ」
「もちろんだ。任せておけ」
そういうとレンは転移魔法で消えていった。
「……誰か来ていたの?」
不思議そうに聞いてくるフィー。
「あぁ、レンが状況を知らせてくれたんだ。さすがにゆっくりしすぎたかも知れないな」
「そういえば昨日の休み、何してたの? また暴走してなかったの?」
「昨日は傭兵ギルドに見学に行って、体験として簡単な依頼を受けさせてもらったくらいだな」
嘘は言ってない。
ちょっとだけ暴走してしまっただけで。
ジト目を向けてくるフィーだが、俺が嘘をついてないとわかるとため息を吐きながら言う。
「フリッツが見てくれてたから今回は信じるの」
「よし!」
「……やっぱり信じないの」
「何でだよ!?」
思わずガッツポーズをしてしまったのが敗因だった。
結局俺は隠し持っていた魔石を取り上げられてしまうのだった――。
◇ ◇ ◇
「うぅぅ……、食べ過ぎて気持ち悪いメェ……」
前まで馬車を引いていたラムだが、今日は青白い顔をしていたために代わりにルナに頑張ってもらっている。
さすがに二体の人形に馬車を運ばせているために魔力の兼ね合いでいつもより速度が遅い。
本当ならさりげなく付与魔法を使おうとしたのだが、フィーの視線を感じなんとなく使いにくくなってしまったので、ゆっくりとした旅を楽しんでいた。
「ひゃっはーーーー! 俺たちは泣く子も黙る
「んっ、なにか声がしなかったか?」
「ゴミを轢いた」
「まぁ、街道だからな。掃除もされてないだろうからゴミくらい落ちてるか」
ただ見栄えはあまり良くない。
俺の街へ行く街道はなるべく整備して巡回させながら掃除もするべきだろうな。
そんなことを考えていた。
「いやいや、確かに盗賊はゴミにも等しい行動だが、せめて人扱いをしてやってくれ」
フリッツが苦笑しながら言う。
「ゆ、揺れると吐きそうメェ……」
ラムが馬車から顔を外に出す。
「くそっ、まさか奇襲とは!? しかし頑丈さだけが取り柄の俺たちにその程度の攻撃など……」
後ろから必死の形相で追いかけてくる先ほどの男たち。
ただそこにはラムの顔があるわけで……。
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
思わず吐いてしまうラムだが、それがそのまま男たちに直撃してしまう。
もちろん吐き出したものは昨日食べたフィーの手料理なので……。
「なんか悲鳴みたいなものが聞こえなかったか?」
「虫?」
いやいや、さすがに人の声だったぞ?
ただ、そういう声を出すような魔物がこの世界にはいるのかもしれない。
「少しだけ体調が戻ったら、お腹が減ったメェ」
吐き終えた後のラムが騒がしくなったので、もう一度フィーの料理を食べさせようか、と思わず考えてしまうのだった。
◇ ◆ ◇
「傭兵ギルドに最先端魔道具を設置した、か。そんな機密事項の固まりのようなものを敵国に持ってくるなんて面白い奴だな」
「いったい何を考えているのでしょうか? もしかして我が国に恩を売って……」
「奴がそんなことを考えているはずないであろう? 大方、頼まれたから作った、とかそんな感じだ」
「そんなことをして何のメリットがあるのですか?」
「メリットとかで動く奴なら帝国に来ていないだろう? おそらくは俺が奴を狙っていることも既に知られているはずだ。その上で来ているのだからよほど腕に自信があるのか、そのどちらにしても楽しい結果になるだろう」
「どこか行かれるのですか?」
「せっかく来てくれるのだから歓迎しないのは悪いだろう?」
そういうと次の瞬間に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます