依頼達成?
食材を買いに来たフィーたち一行。
ただ、フィーがピンとくる食材がなかったようだった。
「もっとこう、大きなお肉が欲しいの。とっても大きなやつ」
両手を広げてその体で大きさを表していた。
ただ、それを聞いていた店員は渋い顔を見せていた。
「さすがにそれほど大きい肉はうちでは扱ってないね」
「そ、そうですよ、フィーちゃん。さすがにこれより大きいお肉はあまり見たことないですよ?」
「うちの領地ではたくさん置いてあるの」
それはまだ解体をほとんどしてない肉のことじゃないだろうか、とエミリナは考える。
「大きい方がきっと喜んでくれるの」
「それならお嬢ちゃんたちが実際に狩りに行くのはどうだい?」
店員の視線はルナへと向いていた。
帝国の人間である彼はルナが
彼女がいればどんな魔物でも狩ることができるであろうことも。
「それは良い案なの」
「……大丈夫ですか?」
エルゥが不安げに聞いてくる。
「そんな危険な魔物は相手にしないの」
「そうですね。せっかくですからフィーちゃんが納得するまでとことん付き合いますよ」
「……頑張る」
他の皆が賛成したことでエルゥも恐る恐る同意する。
そして、四人は街の外へと向かって進んでいくのだった――。
◇ ◇ ◇
ルナが出した巨大人形に乗り、四人は突き進んでいく。
「早いのー」
「まるでラムさんみたいですね」
「んっ、引き分けた」
「あわわっ、お、落ちないでしょうか?」
弱い魔物たちはそのまま引き倒して、フィーが納得のいく魔物を捜し求める。
すると突如として目の前に巨大な何かが落ちてくるのが見えた。
「あれはドラゴ……」
「大トカゲなの!」
「えぇ、大トカ……、じゃないですよ!?」
思わずエミリナは声を大にして言う。
「どうしてこんなところにこんなお肉が落ちてるの?」
「……騒ぎは起こっていなかった」
「流石にドラゴンが襲ってきたら騒動になってそうですけど……」
エミリナがその言葉を告げた瞬間に再びドラゴンが落ちてくる。
「ど、ドラゴン……ですよね?」
一匹でもなかなか倒せないと言われるドラゴンがこうも何匹も落ちてくるなんてありえることだろうか?
いや、ユーリがこの一件に絡んでいるのなら有り得なくもなさそうだ。
「トカゲなの」
なぜかフィーが頑なにトカゲ推ししてくる。
でも、これだけの数がいるのだからドラゴンじゃなくて本当に空飛ぶトカゲなのかもしれない。
何もないところでいきなり落ちてくるドラゴンなんて考えたくもないし。
「そう……ですね。これはきっとトカゲさんですね」
「……えっ? そうなの?」
「前にユーリ様も言ってたの。巨大なトカゲだって。あと岩のトカゲじゃないのは美味しいって」
「そうですか。でも、これは誰かが獲ったものでしょうから勝手に持って帰るわけには行かないでしょうし」
「……誰も来ない」
「勝手に落ちてきただけじゃないでしょうか?」
エルゥが周囲を警戒するものの近づいてくる匂いは何もなかった。
「食べ放題なの!!」
「そう……ですね。もう少し待ってみて誰も取りに来なかったらもらって帰りましょうか」
こうして誰かが来るのを待ちながら落ちてきた
しかし、結局誰も取りに来る事がなかったので、山盛りになった
◇ ◆ ◇
最後に残されたギルドマスターの部屋を掃除しているとようやく丸太を運んできた傭兵やギルドマスターが戻ってくる。
「ただいま帰りました。……ってえぇぇぇぇぇぇっ!?」
大広間に入ってきたギルドマスターが大声を上げていた。
「何かあったのか!?」
「ど、どうしてこんなに綺麗で良い匂いがするのですか!? それに暑くなく寒くもなくちょうど良い気温……」
「さっきも通っただろ?」
ドラゴン討伐のために一度ギルドマスターは大広間を通っている。
つまりこの綺麗になっている大広間を見るのは二度目のはずなのに、なんで今更驚いているのか……。
「さっきはドラゴンのことに頭がいっぱいで全く意識してなかったんですよ!?」
「まぁ、綺麗にした。ただそれだけだ」
「それだけって、これはいくら何でも綺麗すぎますよ!?」
「そうは言ってもな……」
正直まだ風呂とか便所とか弄りに弄りまくったところを見せてもいない。
それなのにこれほど驚かれてしまうのは、困るものがあった。
「まだここに家具を入れていくからな。運んできた丸太はゲイルに渡してくれるか? 彼が家具を作ってくれるから」
「あ、あぁ、わかりました……」
巨大な丸太がゲイルの前に積まれていく。
「ま、待つのじゃ。さすがにこれは多すぎる……」
「そうか? ギルドのカウンターとか棚とかテーブルとか椅子を一新するにはまだまだ足りなくないか?」
「それほどの量、儂一人でどうにかできると思っておるのか?」
「まぁ、そうなるか。仕方ないから最後はみんなで作るよ」
「た、頼んだぞ」
そう言いながらゲイルは先に家具を作り始めてくれる。
「さて、あとはギルドマスターの部屋だけになるが、もうはいっていいか?」
「あ、あぁ、いいですよ。いつでも……」
諦めにも似た口調で言ってくる。
その言葉をもらった俺はギルドマスターの部屋へと向かう。
その後ろからギルドマスターも同様に付いてくる。
ただ、俺が一瞬で部屋を掃除してしまったことに再び大声を上げて驚くのだった――。
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