第7章 26話 淡くかがやく誘宵の月の夜に⑤

「マリーユナさん」


 ラヴィエが後ろからゆん菜を呼んだ。彼女は優美に微笑む。


 夜空に輝く星屑のような笑顔だ。大人びた彼女にしか出せない雰囲気だと思う。


「いろいろあったけど、これからはよろしくお願いします。あの森でのこは、本当に申し訳ございませんでした」


「いえ、昨日の夜はハルヴィン王子のおかげで、助かりました」


 ザッハジルア王に赦しをもらってから、二人とも友人のように接してくれるようになった。


 彼らは、エレミアたちの免罪にも協力してくれるそうだ。


「今宵は祭りを楽しみましょう。貴女が女神さまの祝福が得られますように」


 ラヴィエとハルヴィンはまだ出店を周り初めた。


 五十数え終わり、ゆん菜は林に足を踏み入れた。


 林の中にも、その向こうの公園にも、恋人を捜しているだろう人がいた。


 え? と足を止める。


 辺りが急に真っ暗になったからだ。


 こ、こ、これが女神さまの試練?


 試練って、本当にこんな難しいことだったの?


 メイメイが心配気にポケットからゆん菜は見上げる。


「だ、だ、だいじょうぶだよ。メイメイ」


 真っ暗な世界。

 元の世界の優夜の事故が思い出された。


「わたし、がんばるからね」


 力強く踏み出した足が止まる。

 優夜の身になにかが起こったような気がした。


 ゆん菜はすわり込んだ。


 こ、怖い。……怖い、怖い。


 気にしすぎだって分かっていても怖い。


 元の世界での事故が、ついさっきのことのように感じた。


 もし、また優夜先輩がいなくなったら?

 また召喚しなきゃいけないことになったら?

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