第7章 25話 淡くかがやく誘宵の月の夜に④

「庶民の分際でなにいってんだ? 黙ってミシュアーナのいう通りにしてればいいんだよ」


「性格を疑われますよ、バカ王子」


 ラヴィエが呆れ顔になる。


「尊敬する兄さまの大事な人なんだから、もっと優しくしたらどうですか?」


「優しくはしてるだろ。本気で気を使っているよ」


「それに、人のことを批判できるんですか?」


「なんの話だ?」


「あなただって、人のことはいえないでしょ? 誘宵の祝福をもらいたいって恋人の願いを、毎年無視して」


 ハルヴィンは横をむいた。


「あんな恥ずかしいことできないだろ? ラヴィエは少女趣味なんだよな。艶美な顔に似合わず……」


「なんですって?」 


 ラヴィエは顔を引きつらせる。


 ハルヴィンとしばらく睨み合っていた。


「……やっぱり、俺と参加してくれる? ゆん菜」


 優夜は優しくゆん菜の髪を撫でた。


「俺が必ずゆん菜を捜すから。ゆん菜には俺を信じてほしいんだよ」


「うん、わたしもがんばりたい……」


「じゃあ、俺行くよ」


 優夜は笑顔で手をあげる。その姿はすぐに林の中に消えた。


 心が震えた。


 すぐに後を追いたいが、少しは待つ決まりだ。


 ゆん菜は丘にすわって数を数え始めた。五十は数えないといけないらしい。

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