第7章 24話 淡くかがやく誘宵の月の夜に③

「今日はシャルアと音楽会を聴きにきたんだ。舞踏会もいいなって思ったんだけど、目立つのは嫌だって」


「エスミナは誘宵の月の伝説は試さないの?」


「わたしたちはまだつき合ってないもん。あれは未来の楽しみにするの」


 エスミナはうれしげに夜空を見上げた。


「ユナはもちろん参加するんでしょ? がんばった後、ミシュアーナさまと楽しむっていってたもんね」


「う、ん……」


 ゆん菜はうつむいた。


「どうしたの? 念願の誘宵の月伝説だよ」


「なんか、怖くて」


「怖い?」


 エスミナはふしぎそうにする。


「なんで? 夜の森だから?」


「そうじゃないんだけど……」


 もしかしたら、優夜先輩を見つけられないかもしれない。それが怖い。


「まあ、思ったより難しいみたいだよね。女神さまは試練を与えるみたいだからね。耳が聞こえなくなるとか、周りが暗くなるとか」


「え?!」


 ゆん菜は声を上げる。


 そんなことは初耳だった。


 暗くなって耳が聞こえない? こ、怖い……。


「でも、がんばって乗り越えないとね。霊力を使ったらいけないんだよ。助けも借りたらいけないの。メイメイ、預かろうか?」


 ゆん菜は返事ができなかった。震えが走った。


「……ゆん菜、そんな風に思っていたの?」


 優夜がとなりに立った。心配そうに瞳に影を落とした。


「そうだよね。ゆん菜は怖いの苦手だもんね。今回はやめて来年にしようか?」


 優夜は優しい視線をゆん菜に落とした。


「お前、ミシュアーナの願いを無視する気か?」


 どこからか、声が聞こえてきた。


 近くの出店の前にハルヴィンがいた。ラヴィエと衣服を見ていた。

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